Windows 11で古いプリンターは使えるか:Microsoftが公表したドライバー提供終了の日程と、IPPクラスドライバーの守備範囲
PCを買い替えたのにプリンターは手元に残っている、という場面で最初につまずくのがドライバーです。メーカーのサイトにWindows 11向けのドライバーが見当たらない、入れたはずなのに印刷キューには「Microsoft IPP Class Driver」と表示される。これは不具合ではなく、Microsoftが2023年9月に公表し、複数年かけて段階的に進めている変更の途中経過です。日程表は4段階あり、2026-09-20の時点で最初の2つ(2026年1月15日、2026年7月1日)は過ぎ、最後の段階(2027年7月1日)はまだ来ていません。この記事はその日程表をそのまま読み、「終わるのは何か」と「終わらないと明記されているのは何か」を分けたうえで、複合機の印刷・FAX・スキャンがIPP経由でどう扱われるかというMicrosoftの記載を紹介します。買い替えが必要かどうかは、この区別がついてから判断すれば足ります。
公開 · 更新 · FaultNote 編集方針
この記事が役立つ人・作業前の準備
- PCを買い替えたが、プリンターはそのまま使い続けたい人
- メーカー製ドライバーを入れたのに「Microsoft IPP Class Driver」と表示されて戸惑っている人
- プリンターを買う前に、ドライバー提供の先行きを織り込んでおきたい人
用意するもの
- プリンターの正確な型番(本体のラベルか、設定ページの機器情報)を手元に置く
- 使っているWindowsのバージョンを `winver` で確認する(この変更の対象はWindows 11以降とWindows Server 2025以降です)
- 印刷キューの表示名を確認できるようにしておく(設定 → Bluetoothとデバイス → プリンターとスキャナー)
1. Microsoftが公表している日程表を、そのまま読む
話の出発点は憶測ではなく、Microsoft Learnに掲載された1枚の日程表です。ページの見出しは「廃止予定スケジュールカレンダー - 更新」で、その直下に「2025 年 5 月の更新 – プリンター ドライバーのタイムラインの日付調整。」と書かれています。つまりこの日程は一度後ろ倒しされており、以前どこかで読んだ日付とは違っている可能性があります。当サイトが2026-09-20に閲覧した時点の内容が、下の表です。
重要なのは、この日程が「プリンターが使えなくなる日」ではなく、「ドライバーの配布と更新をどう扱うか」の日程だということです。表の文言はすべて、Windows Updateへの公開、署名の承認、更新の可否について述べています。
2026-09-20の時点では、4段階のうち2026年1月15日と2026年7月1日の2つがすでに経過しています。読者が今まさに遭遇している現象は、この2つのどちらかで説明がつくことがほとんどです。
表は横にスクロールできます →
| 時期 | Microsoftが示している内容 | 2026-09-20時点 |
|---|---|---|
| 2023年9月 | 「Windows のサービス終了プラン用の従来のサード パーティ製プリンター ドライバーを発表しました。」 | 経過済み |
| 2026年1月15日 | 「Windows 11 以降と Windows Server 2025 以降の場合、新しいプリンター ドライバーは Windows Update に公開されません。」既存のドライバーは引き続き更新できるが、ケースバイケースでのみ承認される | 経過済み |
| 2026年7月1日 | 「プリンター ドライバーのランク付け順序が、常に Windows IPP 受信トレイ クラス ドライバーを優先するように変更されました。」 | 経過済み |
| 2027年7月1日 | セキュリティ関連の修正を除き、サードパーティ製プリンタードライバーの更新は許可されなくなる。既存のドライバーはWindows Updateから、または製造元が提供するインストールパッケージからインストールできる | 未到来 |
2. 終わるのは「配布と更新」であって、「印刷」ではない
同じページのFAQは、読者が最も心配する点をいくつも先回りして否定しています。この部分を読まずに日程表だけを見ると、必要のない買い替えに走りかねません。
まず、インストール自体は止まりません。「Windows では、ベンダーが提供するプリンター ドライバーを別のインストール パッケージ経由でインストールすることが引き続き許可されます。」とあります。メーカーのサイトからダウンロードしたインストーラーを実行する経路は、日程表の影響を受けないということです。すでに市場に出ているMicrosoft署名済みのドライバーについても、サービス終了後もWindows PCにインストールできると明記されています。
次に、機能の取り上げも予定されていません。FAQは、従来のプリンタードライバープラットフォームに関係する印刷機能を、サービス終了の一環として無効化する計画はないと述べています。セキュリティ修正についても、そのWindows OSのバージョンがサポートライフサイクル内にある限り、従来のドライバープラットフォームに関する修正は出し続けるとされています。
対象範囲も限定されています。FAQは、この変更がWindows 11以降とWindows Server 2025以降に適用されると答えています。Windows 10をまだ使っている環境は、この日程表の対象ではありません。
表は横にスクロールできます →
| 読者の不安 | Microsoftのページの記載 | 結論 |
|---|---|---|
| メーカー製ドライバーを入れられなくなる | 別のインストールパッケージ経由でのインストールは引き続き許可される | メーカー配布のインストーラーは経路として残る |
| 今入っているドライバーが消える | 既にリリース済みのMicrosoft署名プリンタードライバーは、サービス終了後もインストールできる | 既存環境が日付で壊れるという記載はない |
| 両面・ホチキス留めなどの機能が無効化される | 従来のプリンタードライバープラットフォーム固有の印刷機能を無効化する計画はない | 機能を取り上げる予定は示されていない |
| Windows 10の自分にも影響する | この変更はWindows 11以降とWindows Server 2025以降に適用される | Windows 10は対象外 |
| 脆弱性が放置される | OSバージョンがサポートライフサイクル内である限り、従来プラットフォームのセキュリティ修正は継続 | セキュリティ修正は日程表の例外 |
3. 「なぜか IPP Class Driver になる」の正体
読者からの相談で最も多い形はこれです。メーカー製ドライバーを入れたはずなのに、プリンターの表示名が「Microsoft IPP Class Driver」になっている。
日程表の3行目が、そのまま答えになっています。2026年7月1日に「プリンター ドライバーのランク付け順序が、常に Windows IPP 受信トレイ クラス ドライバーを優先するように変更されました。」とあります。ランク付け順序とは、1台のプリンターに複数のドライバーが該当するときにWindowsがどれを選ぶかの優先順位のことです。これが常にIPPクラスドライバーを優先する側に変わったので、メーカー製ドライバーが存在していてもIPP側が選ばれる、という挙動になります。
この仕組み自体はもっと古くからあります。同ページの概要によれば、Windows 10 21H2のリリース時点で、WindowsはMicrosoft IPPクラスドライバーを介して、ネットワークとUSBの両インターフェイス経由でMopria準拠プリンターの受信トレイサポート(追加インストールなしの標準対応)を提供しています。メーカー固有の操作画面については、Windowsストア経由で配布され自動インストールされる「印刷サポート アプリ」で提供される設計です。つまり、IPPクラスドライバー+印刷サポートアプリの2階建てが、従来のv3/v4ドライバーの置き換えとして用意されています。
ここで当サイトが確認できなかったことを明示しておきます。ランク付け順序が変わったあと、メーカー製ドライバーを明示的に選び直す手順がどうなるかについて、このページは何も書いていません。手順を推測で書くことはしないので、機種ごとの案内はプリンターメーカーの窓口で確認してください。
4. 複合機は? 印刷・FAX・スキャンでIPPの守備範囲が違う
スキャナーとFAXがついた複合機を使っている読者にとっては、ここが実務上いちばん大きな分かれ目です。同ページのFAQは「多機能デバイス (印刷、スキャン、FAX) は IPP 経由で動作しますか?」という質問に「はい」と答えたうえで、ネットワーク接続とUSB接続で条件が違うことを具体的に書いています。
ネットワーク接続の場合、印刷はIPP、FAXはIPP Fax Out、スキャンはWS-ScanまたはeSCLで動作するとされています。USB接続の場合は条件つきで、USBインターフェイスがIPP Over USBモードになっているときにのみ各エンドポイントへアクセスできる、とあります。そのときの内訳は、印刷がIPP、FAXがIPP Fax Out、スキャンはeSCLのみです。
読み取れる実務上の含意は単純です。USB接続でしか使っていない複合機は、その機種がIPP Over USBモードに対応しているかどうかが分岐点になります。ネットワーク(有線LANやWi-Fi)に載せられる機種であれば、選択肢は広くなります。買い替えを検討する前に、まず接続方法を変えられないかを見る価値があります。
表は横にスクロールできます →
| 機能 | ネットワーク接続 | USB接続(IPP Over USBモード時) |
|---|---|---|
| 印刷 | IPP | IPP |
| FAX送信 | IPP Fax Out | IPP Fax Out |
| スキャン | WS-Scan または eSCL | eSCL のみ |
5. 自分のプリンターがこの枠に入るかを確認する
ここまでの話は「Mopria準拠であること」を前提に組み立てられています。では自分のプリンターがそうなのかは、どこで分かるのか。
Microsoftのページは、Mopria認証を確認する場所を案内していません。確認先はMopria Allianceの認証製品検索ページです。2026-09-20に閲覧したところ、メーカー名と製品種別(Printers & MFPs、Scanner、Print Server など)で絞り込む検索フォームになっており、メーカーの選択肢にはブラザー、キヤノン、エプソン、京セラ、コニカミノルタ、リコー、シャープ、東芝テック、富士フイルムビジネスイノベーション、沖電気、NEC、HP、レックスマーク、ゼロックスなど、日本で流通している主要ブランドが並んでいました。検索結果そのものはページを開いてから読み込まれる方式のため、当サイトでは個別の機種一覧を取得していません。型番の照会はご自身で行ってください。
もうひとつ、Microsoftの記載から逆算できる手がかりがあります。FAQの「ドライバー パッケージに署名できる条件」に、「Mopria 認定を受けられないプリンター。」が挙げられています。Mopria認証を取れない機種のためにドライバー署名の例外が残されている、という構造です。これは、Mopria認証がこの新しい枠組みの前提になっていることの裏返しでもあります。同じ例外リストには「Windows 10 以下の上限を指定するドライバー パッケージの申請」と「ネイティブ ARM64 プリンター ドライバー」も含まれています。
表は横にスクロールできます →
| 確認すること | 見る場所 | 外れていたときの意味 |
|---|---|---|
| Windowsのバージョン | `winver` | Windows 10ならこの日程表の対象外 |
| Mopria認証の有無 | Mopria Allianceの認証製品検索(メーカー名・製品種別で絞り込み) | 認証がなければIPPクラスドライバーによる標準対応は期待できない |
| 接続方法 | 本体の接続ポートと設定メニュー | USBのみの機種は、IPP Over USBモード対応かどうかが分岐点 |
| メーカー製ドライバーの配布 | プリンターメーカーのダウンロードページ | 配布があれば、インストールパッケージ経由の導入は日程表の影響を受けない |
| 必要な機能 | 自分が実際に使っている機能(両面、ホチキス、スキャン方式) | IPPと印刷サポートアプリで代替できるかは機種依存で、Microsoftのページでは判断できない |
6. 買い替えるか、使い続けるか
ここまでを踏まえると、「Windows 11にしたから買い替え」という結論に直行する理由は、少なくともMicrosoftのこのページからは出てきません。日程表が止めているのはWindows Update経由の新規配布と将来の更新であって、印刷そのものではないからです。
買い替えを積極的に検討したほうがよいのは、次のどれかに当てはまるときです。第一に、メーカーがその機種のWindows 11向けドライバーを配布しておらず、Mopria認証もないとき。このときはIPPクラスドライバーによる標準対応も、メーカー製ドライバーの導入経路も、どちらも当てにできません。第二に、USB接続専用でIPP Over USBモードに対応していない複合機で、スキャンを日常的に使っているとき。第三に、ドライバーに依存する固有機能(特定の用紙処理や後処理)が業務上どうしても必要で、それが印刷サポートアプリでは提供されていないとき。
逆に、ネットワークに載せられてMopria認証がある機種で、使っている機能が一般的な印刷とスキャンの範囲なら、日程表を理由に買い替える必要は現時点では見当たりません。2027年7月1日以降も、既存ドライバーのインストール経路とセキュリティ修正はページ上で維持が明記されています。
買い替える場合に何を基準に選ぶかは、ドライバーとは別の軸の話になります。インクカートリッジ方式と大容量タンク方式、レーザーのどれを選ぶかというランニングコストの判断は、当サイトの印刷コストの記事を参照してください。
注意点・利用条件
- この日程表は2025年5月に一度改定されています。ページ自体に「2025 年 5 月の更新 – プリンター ドライバーのタイムラインの日付調整。」と明記されているため、別の場所で見た日付と食い違う場合は、Microsoftの現行ページを優先してください。当サイトの確認日は2026-09-20、ページの最終更新表示は2025-05-09です。
- この記事の日本語の引用は、Microsoft Learnの日本語版ページの表記をそのまま写したものです。同ページは英語版からの翻訳で、日本語として不自然な箇所があります。意味が取りにくい場合は英語版を併読してください。
- 終了するのは従来型(v3およびv4)プリンタードライバーのサービス提供です。プリンター本体の動作保証や、メーカーによる修理対応期間とは別の話であり、Microsoftのページはそれらについて何も述べていません。
- ランク付け順序が変わったあとにメーカー製ドライバーを明示的に選び直す手順は、このページに記載がありません。当サイトはその手順を推測で補いません。
- 機種がMopria認証を受けているかどうかは、Microsoftのページでは確認できません。Mopria Allianceの検索ページで型番を照会してください。当サイトは個別機種の認証状況を検証していません。
よくある質問
2027年7月1日を過ぎると、今のプリンターは印刷できなくなりますか。
Microsoftのページにそのような記載はありません。この日に変わるのは「セキュリティ関連の修正プログラムを除き、サードパーティのプリンター ドライバーの更新は許可されなくなります。」という点です。同じ行に、既存のサードパーティ製ドライバーはWindows Updateから、あるいは製造元が提供するインストールパッケージからインストールできると続いています。更新が止まることと、印刷できなくなることは別です。
印刷キューの名前が「Microsoft IPP Class Driver」になっていますが、故障ですか。
故障ではなく、日程表に書かれた変更が効いている状態です。2026年7月1日に、プリンタードライバーのランク付け順序が常にWindows IPP受信トレイクラスドライバーを優先するよう変更されています。印刷そのものができているなら、まずは実際に困っている機能があるかどうかで判断してください。
Windows 10のPCも同じ影響を受けますか。
受けません。FAQの「サービスの終了は、すべてのバージョンの Windows に適用されますか?」に対して、この変更はWindows 11以降とWindows Server 2025以降に適用されると回答されています。ただし、Windows 10自体のサポート終了は別問題です。その判断については当サイトのWindows 10延長セキュリティ更新プログラムの記事を参照してください。
メーカーのサイトにWindows 11向けドライバーがありません。もう打つ手はありませんか。
順に2つ確認できます。第一に、その機種がMopria認証を受けているか。受けていれば、Microsoft IPPクラスドライバーによる標準対応の対象です。第二に、接続方法を変えられるか。USB接続だけで使っている機種でも、有線LANやWi-Fiに載せられるならネットワーク側のIPPでスキャン(WS-ScanまたはeSCL)まで届く可能性があります。どちらも当てはまらない場合は、買い替えを検討する段階です。
メーカー独自の設定画面は使えなくなりますか。
Microsoftの設計では、メーカー固有のデバイス体験のカスタマイズは「印刷サポート アプリ」に移り、Windowsストア経由で配布され自動インストールされることになっています。ただし、特定の機種にそのアプリが提供されているかどうかはメーカー次第で、Microsoftのページからは判断できません。使っている機能が具体的にあるなら、その機能名でメーカーのサポート情報を検索してください。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- Microsoft Learn:Windows 上のサード パーティ製プリンター ドライバーのサービス終了プラン(日本語版)。4段階の廃止予定スケジュールカレンダー、2025年5月の日付調整の注記、FAQ(インストール経路、既存ドライバー、対象バージョン、複合機のIPP動作)。ページの最終更新表示は2025-05-09。2026-09-20閲覧 ↗
- Microsoft Learn:End of servicing plan for third-party printer drivers on Windows(英語版)。同一内容の原文。概要のMicrosoft IPP Class Driver/Print Support Appsの記載、ドライバー署名の例外3条件、セキュリティ修正の継続に関する回答を原文で確認。ページの最終更新表示は2025-05-09。2026-09-20閲覧 ↗
- Mopria Alliance:認証製品の検索ページ。メーカー名と製品種別(Printers & MFPs、Scanner、Print Server、Software ほか)で絞り込む検索フォームであること、およびメーカー選択肢に並ぶブランド名を確認。検索結果は動的に読み込まれるため、個別機種の一覧は当サイトでは取得していない。2026-09-20閲覧 ↗
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