カタログの「バッテリー駆動時間」は何を測った数字か:JEITA測定法3.0の読み方
ノートPCのカタログに2つの駆動時間が併記されているのは、JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver. 3.0)がそう定めているからです。規格は動画再生時とアイドル時の2つを測ることとし、動作時間を「新品相当のバッテリを満充電状態でバッテリ動作を開始し、シャットダウンまたは休止状態に移行するまでの時間」と定義しています。測定条件は画面輝度200cd/m²以上、音量はヘッドホン接続時50%、無線LANはアクセスポイントに接続した状態などです。一方で規格は、通信の有無・電波環境・アクセスポイントまでの距離・パワーマネジメント設定・他のアプリの扱いを「規定しない」と明記しています。同じJEITA 3.0準拠でも条件が完全に揃っているわけではない、という点がカタログ値を読むうえで最も重要です。
公開 · 更新 · FaultNote 編集方針
この記事が役立つ人・作業前の準備
- カタログの駆動時間が2つ併記されている理由と、どちらを見ればよいかを知りたい人
- カタログ値と実際の持ち時間が合わない理由を、根拠のある形で理解したい人
- 中古や型落ち機の古いカタログ値と、新しい機種の数字を比べようとしている人
用意するもの
- 比較したい機種のカタログまたは製品ページから、駆動時間の記載を注記まで含めて書き写す
- その記載に「JEITA測定法3.0」などの準拠表記があるかどうかを確認する
- 自分の使い方が動画・会議のように画面と音が動く用途に近いのか、文書作成で待機時間が長い用途に近いのかを整理しておく
1. 2つの数字は何を測ったものか
JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver. 3.0)は2023年5月31日に発行された規格で、対象は「バッテリを搭載した PC・タブレット」です。規格本文は、動画再生時とアイドル時の2つの状態の動作時間を測り、「それらの結果を本測定法に基づくバッテリ動作時間と定める」としています。
動作時間の定義は「基本的に動作時間は、新品相当のバッテリを満充電状態でバッテリ動作を開始し、シャットダウンまたは休止状態に移行するまでの時間を測定した結果とする。」です。ここに「新品相当」「満充電」「停止するまで」という3つの前提が入っています。使い込んだバッテリで、満充電から使い切るわけでもない日常の使い方と数字が合わないのは、この前提の違いが一因です。
動画再生時は、規格が指定する動画ファイルをフルスクリーンで連続再生して測ります。その動画は3840x2160ピクセル、H.264/AVC、映像ビットレート75.5Mbps、60fps、音声AAC 189kbpsと規定されています。アイドル時は、規格が指定する壁紙ファイルをフルスクリーンで表示してデスクトップ画面のまま放置して測ります。
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| 項目 | 動画再生時 | アイドル時 |
|---|---|---|
| 何をするか | 規格が指定する動画ファイルをフルスクリーンで連続再生 | 規格が指定する壁紙ファイルをフルスクリーン表示してデスクトップのまま放置 |
| 適用される条件 | 測定条件の1)〜5) | 測定条件の1)〜4)(動画再生アプリの条件は適用されない) |
| 測る区間 | バッテリ動作開始からシャットダウンまたは休止状態に移行するまで | 同じ |
| ファイルの仕様 | 3840x2160ピクセル、H.264/AVC、映像75.5Mbps、60fps、音声AAC 189kbps | 指定の壁紙画像(規格のダウンロードページから入手) |
2. 測定条件と、規格が「規定しない」と書いている項目
測定条件は規格の4.4項にまとめられています。音量はヘッドホン接続時50%、本体スピーカー出力なら最低音量でも可(ただし音量0%およびミュートは不可)。画面輝度は200cd/m²以上で、最大輝度がそれに満たない製品は輝度を最大とし、白表示時の輝度で規定します。無線LANはアクセスポイントに接続した状態とし、Bluetooth・LTE・5G等はオフでも可です。
この記事でいちばん重要なのは、規格が「規定しない」と明記している項目のほうです。無線LANについては「通信方式、通信の有無、電波環境、アクセスポイントまでの距離については規定しない。」とあります。さらに「パワーマネジメント設定、測定中の他の動作アプリケーションやバックグラウンドアプリケーションの扱いおよびシャットダウンまたは休止状態に移行する電池残量等については規定しない」とも書かれています。
つまり「どちらもJEITA 3.0準拠」であっても、通信負荷やバックグラウンドの状態まで揃っているわけではありません。ただし規格は、出荷時設定から変更した内容は公開しなければならないとしており、さらに輝度計を使わずにおよそ200cd/m²に設定する方法、使用した動画再生アプリケーション、出荷時から変更した設定内容の3つをWebやカタログで開示するよう求めています。比較したい2機種があるなら、この開示情報を探すのが次の一手です。
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| 条件 | Ver. 3.0の規定 | 規格が規定しないこと |
|---|---|---|
| 音量 | ヘッドホン接続時は50%。本体スピーカー出力なら最低音量でも可(音量0%およびミュートは不可) | 使用するヘッドホンの接続方法は標準ジャックでもBluetooth等の無線でも可とされている |
| 画面輝度 | 200cd/m²以上。最大輝度が満たない製品は最大輝度。白表示時の輝度で規定 | 実際の使用時にユーザーがどの輝度で使うかは当然規定されない |
| 無線LAN | アクセスポイントに接続した状態 | 通信方式、通信の有無、電波環境、アクセスポイントまでの距離 |
| その他の無線 | Bluetooth / LTE / 5G 等はオフでも可 | オフにするかどうかの判断は測定者に委ねられる |
| ソフトウェアの状態 | 動画再生アプリはインストール済みならそれを使用 | パワーマネジメント設定、他の動作アプリやバックグラウンドアプリの扱い、移行時の電池残量 |
| 動画ファイルの置き場所 | 規定しない | ただし格納場所は公開することとされている |
3. 表示のルールを知ると、カタログの読み方が変わる
規格の5章は表示と情報公開のルールを定めています。JEITA測定法3.0準拠であることを示すこと、単位は時間で小数第一位まで表示してよいこと、「約」を付けてもよいこと、そして動画再生時とアイドル時の両方を併記することが求められています。
並べ方にも規定があります。「併記を左右に並べる場合、左側に動画再生時の時間を表示する。」「併記を上下に並べる場合、上側に動画再生時の時間を表示する。」さらに「併記に際して、アイドル時動作時間のフォントサイズを動画再生時動作時間より大きくしてはならない。」とされています。
この3つのルールから、実用的な読み方が1つ導けます。カタログで左側または上側に置かれている数字、あるいは大きく出ている数字は、規格どおりに表示されているなら動画再生時の値です。なお表示スペースが限られる場合は動画再生時のみの表示も認められていますが、その場合は動画再生時であることを明記し、Webサイト等で両方を示すこととされています。片方しか見当たらないときは、メーカーのWebサイトを探してください。
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| ルール | 規格の内容 | 読者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 準拠の明示 | JEITA測定法3.0準拠であることを示すこと | 準拠表記が無い数字は、この規格で測られたとは限らない |
| 併記 | 動画再生時とアイドル時の両方を、どちらか明確に分かるように記載する | 2つあるのが標準。1つしか無いのは省略表示か別の測定 |
| 並べ方 | 左右なら左に動画再生時、上下なら上に動画再生時 | 左または上の数字が動画再生時 |
| 文字サイズ | アイドル時のフォントサイズを動画再生時より大きくしてはならない | 大きく出ている数字はアイドル時ではない |
| 省略表示 | スペースが限られる場合は動画再生時のみでもよい。ただしその旨を明記し、Web等で両方を示す | 1つしか無いときはメーカーのWebサイトで両方を探す |
| 併せて開示する情報 | 輝度計を使わずにおよそ200cd/m²に設定する方法、使用した動画再生アプリケーション、出荷時から変更した設定 | 機種間の条件差を確かめる手がかりになる |
4. Ver. 2.0の数字と直接比べてはいけない理由
規格本文の【解説】には新旧比較の表が載っています。Ver. 2.0は動画再生時とアイドル時の平均値を動作時間としていましたが、Ver. 3.0は両方を併記します。画面輝度は150cd/m²以上から200cd/m²以上に、動画ファイルは1920x1080 30fpsから3840x2160 60fpsに、動画再生時の音量はミュート可からヘッドホン50%等に、アイドル時の壁紙は指定なしから指定ありに変わりました。
【解説】は改訂の理由も自ら説明しています。近年の動的な省電力機能によってアイドル時の消費電力が大幅に低減された結果、「動画再生時とアイドル時の平均値として定義していた JEITA測定法 2.0 動作時間は、アイドル時の測定結果による影響を大きく受けるようになった」ためです。これは規格自身の説明であり、当サイトの推測ではありません。
移行の時期も公開されています。JEITAのニュースページは、Ver. 3.0が2023年5月31日に発行され、2023年12月1日から各PCメーカーのカタログ等でVer. 3.0による測定値の記載が始まったこと、2023年12月1日から2024年11月30日の1年間が移行期間で併記が推奨されていたこと、そして「2024年12月1日以降、Ver.2.0による測定値は記載されません」と告知しています。
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| 項目 | Ver. 3.0 | Ver. 2.0 |
|---|---|---|
| 動作時間の表示 | 動画再生時およびアイドル時の動作時間を併記 | 動画再生時とアイドル時の動作時間の平均値 |
| 画面輝度 | 200cd/m²以上 | 150cd/m²以上 |
| 動画ファイル | 3840x2160 60fps | 1920x1080 30fps |
| 動画再生時の音量 | ヘッドホンを接続し音量50%もしくはスピーカ最低音量でも可 | ミュートでも可 |
| アイドル時壁紙 | 指定の壁紙 | 指定なし |
5. 機種を比べるときの使い方
まず、どちらの数字を基準にするかを決めます。自分の使い方が動画視聴やオンライン会議のように画面と音が動き続ける用途に近いなら動画再生時の値が近い前提です。文書作成が中心で待機している時間が長いなら、2つの値の間で考えることになります。ただし規格は用途と数値の対応づけを行っていないので、この整理は当サイトの編集上のものです。
次に、比べる2機種が同じ版で測られているかを確認します。準拠表記が「JEITA測定法3.0」で揃っていれば、測定の枠組みは同じです。片方が2.0の値なら直接比べられません。JEITAは2024年12月1日以降Ver. 2.0の測定値は記載されないと告知しているので、それ以降のカタログなら3.0の値と考えられますが、中古や型落ち機の古い資料を見る場合は注記を確認してください。
最後に、開示情報を見ます。規格は、輝度の設定方法、使用した動画再生アプリ、出荷時からの設定変更をWebやカタログで開示するよう求めています。ここに差があれば、同じ3.0準拠でも条件が違うことが分かります。実機を買ったあとの劣化の度合いは別の話なので、当サイトのバッテリーレポートの記録を参照してください。
6. この記事が扱わないこと
「カタログ値の何割が実際の持ち時間か」という換算は示しません。根拠がないためです。この記事が提供できるのは、規格が規定している条件と、規定していない条件の一覧だけです。それを踏まえて、自分の使い方がどれだけ測定条件から離れているかを読者自身が見積もることになります。
特定機種の駆動時間の数値も扱いません。当サイトは実機の測定を行っていないためです。バッテリーの寿命(年数やサイクル数)の断定も行いません。海外メーカーのカタログ値をJEITA値と同列に比較することもしません。測定法が異なるためです。
規格が指定する測定用の動画・壁紙ファイルは、著作権法およびその他の法律で保護されており、バッテリ動作時間測定の使用目的に限って使用可能である旨が規格本文に明記されています。当サイトはこれらのファイルを再配布しません。入手はJEITAのページから行ってください。
注意点・利用条件
- 同じ「JEITA測定法3.0準拠」でも、条件が完全に揃っているわけではありません。規格は通信方式・通信の有無・電波環境・アクセスポイントまでの距離、パワーマネジメント設定、他のアプリの扱い、移行時の電池残量を規定しないと明記しています。
- Ver. 2.0の値とVer. 3.0の値は直接比べられません。表示方法(平均値か併記か)、輝度(150か200cd/m²以上か)、動画ファイル、音量、壁紙のすべてが変わっています。
- 動作時間の定義には「新品相当のバッテリ」「満充電状態」「シャットダウンまたは休止状態に移行するまで」という前提が含まれます。使い込んだ個体の実感と数字が一致しないことの一因です。
- 規格が指定する動画・壁紙ファイルは著作権で保護されており、バッテリ動作時間測定の目的に限って使用可能とされています。再配布はできません。
よくある質問
なぜカタログどおりの時間もたないのですか。
測定条件と実際の使い方が違うためです。規格は輝度200cd/m²以上、無線LANはアクセスポイントに接続した状態、といった条件を定める一方で、通信の有無や電波環境、距離、パワーマネジメント設定、他のアプリの扱いは規定しないと明記しています。また動作時間は新品相当のバッテリを満充電から停止まで使った場合の値です。どの条件が自分の使い方とどれだけ違うかを見るのが、現実的な読み方です。当サイトは換算の割合を示しません。
カタログに数字が1つしかありません。
規格は、表示スペースが限られる場合には動画再生時の動作時間のみの表示を認めていますが、その場合は動画再生時であることを明記し、WebサイトなどでVer. 3.0の両方の値を示すこととしています。メーカーのWebサイトの仕様ページを探してください。準拠表記そのものが無い場合は、この規格で測られた数字とは限りません。
JEITA 2.0と書かれた中古機のカタログ値は、今の機種と比べられますか。
直接は比べられません。Ver. 2.0は動画再生時とアイドル時の平均値で、画面輝度も150cd/m²以上、動画ファイルは1920x1080 30fps、音量はミュート可と、測定条件そのものが違います。JEITAは2024年12月1日以降Ver. 2.0による測定値は記載されないと告知しているので、それ以降のカタログなら3.0と考えられます。古い資料を見るときは注記の版表記を確認してください。
海外メーカーの駆動時間の表記と比べられますか。
測定法が異なるため、同列には比べられません。JEITA測定法3.0は日本の業界団体が定めた測定法で、条件と表示のルールがこの記事で示したとおりに決まっています。別の測定法で得られた数字と並べると、条件の違いが見えないまま比較することになります。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- JEITA:JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver. 3.0)メニューページ。発行日2023年5月31日、測定用動画の仕様(3840x2160、H.264/AVC、75.5Mbps、60fps、AAC 189kbps)、ファイルの利用条件。2026-09-20閲覧 ↗
- JEITA:測定法本文PDF(日本語版、全8ページ+解説)。動作時間の定義、4.2/4.3の測定方法、4.4の測定条件と「規定しない」項目、5章の表示ルール、6章の著作権の記載、【解説】の新旧比較表と改訂理由。2026-09-20に取得し全文を読了 ↗
- JEITA:測定法本文PDF(公式英語版)。英語記事の用語と引用はこちらの表記に合わせている。2026-09-20に取得し全文を読了 ↗
- JEITA:JEITAバッテリ動作時間測定法Ver.3.0完全移行について。2023年12月1日からの記載開始、2023年12月1日〜2024年11月30日の移行期間、2024年12月1日以降はVer. 2.0による測定値が記載されない旨。2026-09-20閲覧 ↗
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