CAMM2・LPCAMM2とは:ノートPCのメモリが「はんだ付けかSO-DIMMか」で済まなくなった理由
ノートPCのメモリは長いあいだ「基板直付け(増設不可)」か「SO-DIMMスロット(増設可)」の二択で説明されてきました。そこに第3の形態が加わっています。JEDECは2023年12月にJESD318(CAMM2共通標準)を発行し、2024年10月にはLPDDR5 CAMM2用コネクタの性能標準PS-007Aを発行しました。2026-09-20時点の文書ページでは、CAMM2共通標準はJESD318B Version 1.14(Published Nov 2025)になっています。重要なのは、同じCAMM2という名前でもDDR5版とLPDDR5版はピン配置が異なり、JEDEC自身が、取り付けるべきでない場所にモジュールが取り付けられないよう取り付け手順に意図的な差を設けたと述べている点です。つまり「CAMM2だから互換」とは言えません。この記事はJEDECの発表文と文書ページを読み、形態の見分け方と、増設可否をどこで判断するかを整理します。特定の機種や製品名は扱いません。
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この記事が役立つ人・作業前の準備
- ノートPCの仕様欄でCAMM2やLPCAMM2という表記を見て意味を知りたい人
- ノートPCを買う前に、後からメモリを増やせるかを判断したい人
- CAMM2のDDR5版とLPDDR5版の関係を正確に知りたい人
用意するもの
- 検討中または使用中のノートPCの正確な型番を確認する
- メーカーの製品仕様ページで、メモリ欄(容量、種別、スロット、最大容量)の記載を開けるようにしておく
- 現在の搭載容量を確認する(タスクマネージャーのパフォーマンスタブのメモリ)
1. 第3の形態としてのCAMM2
CAMM2はCompression Attached Memory Module の略で、モジュールをコネクタに圧着して取り付ける方式のメモリモジュール規格です。JEDECは2023年12月5日の発表で、JESD318 CAMM2共通標準の発行を告知しました。発表文によれば、この標準は「DDR5 SDRAM CAMM2s」と「LPDDR5/5X SDRAM CAMM2s」の両方について、電気的・機械的要件を1本の文書で定めるものです。
用途の想定も発表文に書かれています。「DDR5 and LPDDR5/5X CAMM2s cater to distinct use cases.」として、DDR5 CAMM2は性能重視のノートPCと主流のデスクトップ向け、LPDDR5/5X CAMM2はより広い範囲のノートPCと一部のサーバー市場向け、と区別されています。
2026-09-20に文書ページを確認したところ、現行版はJESD318B、Release Number: Version 1.14、Published: Nov 2025 と表示されていました。説明文では対象が「DDR5 SDRAM CAMM2s」と「LP5 SDRAM CAMM2s」と書かれ、「These DDR5 and LP5 CAMM2s are intended for use as main memory when installed in computers, laptops, and other systems.」とされています。この文書ページも「Free download. Registration or login required.」の表示です。当サイトは規格本体を取得しておらず、記述は文書ページの説明文と発表文に基づきます。
LPCAMM2という呼び方については、2024年10月31日の別の発表が手がかりになります。JEDECはPS-007A「LPDDR5 CAMM2 Connector Performance Standard」の発行を告知し、そのコネクタを「LP5CAMM2」と呼ぶと述べています。同じ発表文は、これが「a standardized modular LPDDR5 solution with ecosystem support, unlike the traditional LPDDR5 memory-down approach」を提供するものだと説明しています。従来のLPDDR5は基板直付け(memory-down)が前提だったのに対し、モジュール化した標準を用意した、という位置づけです。
2. 「CAMM2だから互換」ではない:DDR5版とLPDDR5版の関係
読者が最も誤解しやすいのがここです。同じCAMM2という名前がついていても、DDR5 CAMM2とLPDDR5 CAMM2のモジュールは互換ではありません。
2023年の発表文が明確に述べています。「While JESD318 CAMM2 defines a common connector design for both DDR5 and LPDDR5/X, it is crucial to note that the pinouts for each differ.」つまり、コネクタの設計は共通だがピン配置は異なる、とわざわざ注意を促しています。
さらに、物理的な安全装置も設けられています。同じ段落は「To support different motherboard designs, intentional variations in mounting procedures between DDR5 and LPDDR5/X CAMM2s prevent the mounting of a module where it should not go.」と続きます。取り付け手順に意図的な差を設けることで、取り付けるべきでない場所にモジュールが取り付けられないようにしている、という説明です(日本語は当サイトによる訳で、JEDECの原文は英語です)。
実務上の含意は単純です。交換用モジュールを探すときは、「CAMM2対応」という表記だけでは足りず、DDR5なのかLPDDR5/5Xなのかまで一致させる必要があります。そしてその情報は、JEDECの規格ではなく、PCメーカーの仕様欄と部品情報にあります。
表は横にスクロールできます →
| 観点 | DDR5 CAMM2 | LPDDR5/5X CAMM2(LP5CAMM2) |
|---|---|---|
| JEDECが示す想定用途 | 性能重視のノートPCと主流のデスクトップ | より広い範囲のノートPCと、一部のサーバー市場 |
| コネクタ設計 | JESD318で共通に定義 | 同じくJESD318で共通に定義 |
| ピン配置 | 異なる(JEDECが明示的に注意喚起) | 異なる(同上) |
| 誤装着の防止 | 取り付け手順の意図的な差により、取り付けるべきでない場所には付かない | 同上 |
| コネクタの性能標準 | この記事で読んだ範囲では別途の発表を確認していない | PS-007A(2024年10月31日発行告知、JC-11委員会) |
3. SO-DIMMと比べて何が違うと言われているか
2024年のPS-007A発表文には、DDR5 SO-DIMMコネクタとの比較が箇条書きで載っています。これはJEDECが公表している設計上の利点であり、当サイトが測定した値ではありません。そのまま引きます。
挙げられているのは3点です。「Better signal integrity (SI) and improved radio frequency interference (RFI)」、「To enable a module solution with lower power consumption and increased battery life」、そして「50% form factor reduction with the similar Z height」です。3点目は、同程度の高さを保ちながら占有面積が半分になる、という意味の記述です。
同じ発表文には委員会や採用企業の談話も載っていますが、いずれも設計上の狙いを述べたもので、具体的な製品の性能値ではありません。当サイトはCAMM2搭載機とSO-DIMM搭載機の比較測定を行っておらず、バッテリー駆動時間の差などの数値は一切示しません。
なお、CAMM2には積層構成の話もあります。2023年の発表文は、JESD318 CAMM2がスタッカブルなCAMM2、すなわちデュアルチャネル(DC)とシングルチャネル(SC)に対応すると述べ、デュアルチャネル用コネクタを長手方向に2つのシングルチャネル用コネクタへ分割すると、一方の半分が2.85mmの高さで1つのDDR5メモリチャネルを、もう一方が7.5mmの高さで別のDDR5メモリチャネルを担える、と説明しています。これはPC設計者向けの自由度の話であり、利用者が後から積み増せるという意味ではありません。
4. 増設できるかどうかは、規格ではなく機種で決まる
ここが最も誤解されやすい点なので、はっきり書きます。CAMM2がモジュール式であることは、その機種でユーザーがメモリを交換・増設できることを意味しません。JEDECの規格はモジュールとコネクタの要件を定めるもので、PCメーカーがどう実装し、どの部品を供給するかは別の話です。
実際、増設の可否を決める条件は少なくとも3つあります。機種がそのモジュール形態を採用していること、交換に必要な分解が許容されていること、そして交換用モジュールが入手できること。このうち規格から分かるのは1つ目の一部だけで、残り2つはメーカーの仕様ページ、保守部品情報、分解手順の公開状況を見るしかありません。
したがって、ノートPCを買う前の確認手順としては、形態の名前を見つけることが出発点で、終点ではありません。仕様欄に「オンボード」「はんだ付け」「交換不可」と書かれていれば購入時の容量で確定します。「メモリスロット ×2」と書かれていればSO-DIMMの可能性が高い。CAMM2やLPCAMM2と書かれていれば、モジュール式ではあるものの、その機種で交換部品が供給されるかどうかを別途確認する必要がある、という読み方になります。
実際の確認手順(メモリがオンボードか、スロットが空いているか、M.2スロットに余裕があるか)は、当サイトのノートPC増設可否の記事で扱っています。この記事はそこに第3の形態を足すものです。
表は横にスクロールできます →
| 仕様欄の表記 | 交換・増設の余地 | 判断の根拠になるもの |
|---|---|---|
| オンボード/基板直付け/交換不可 | 無し。購入時の容量で確定 | メーカー仕様の記載 |
| メモリスロット ×1 / ×2(SO-DIMM) | スロット数と最大容量の範囲で可能 | 仕様欄のスロット数と最大容量 |
| CAMM2 / LPCAMM2 / LP5CAMM2 | モジュール式だが、機種の対応と交換部品の入手可否が前提 | メーカーの仕様ページと保守部品情報。JEDECの規格からは判断できない |
| 記載が無い | 不明 | メーカーに問い合わせる。推測しない |
注意点・利用条件
- CAMM2がモジュール式であることは、その機種でユーザーがメモリを交換・増設できることを意味しません。実装と部品供給はPCメーカー側の判断です。
- DDR5 CAMM2とLPDDR5/5X CAMM2はピン配置が異なるとJEDECが明示しています。「CAMM2対応」という表記だけで交換用モジュールを選ばないでください。
- この記事に性能の測定値はありません。SO-DIMMコネクタとの比較として挙げた3点は、JEDECが発表文に記載した設計上の利点であり、当サイトの測定ではありません。
- JEDECの規格本体(JESD318B、PS-007A)は登録またはログインのうえ無償でダウンロードできる扱いですが、当サイトは取得していません。記述は文書ページの説明文と発表文に基づきます。
- 特定のノートPCの機種名や、交換用モジュールの製品名・価格はこの記事では扱いません。入手性は時期と地域で変わります。
- 規格の版は変わります。2026-09-20時点でJESD318BはVersion 1.14(Published Nov 2025)でした。2023年の発表文はJESD318について述べたものです。
よくある質問
LPCAMM2のノートPCなら、後からメモリを増やせますか。
規格の上ではモジュール式ですが、それだけでは判断できません。その機種が交換を想定した設計になっているか、交換用モジュールが供給されるかは、PCメーカー側の事情です。メーカーの仕様ページと保守部品情報で確認してください。JEDECの規格文書からは分かりません。
CAMM2のモジュールなら、どのCAMM2機種でも使えますか。
使えません。JEDECは「it is crucial to note that the pinouts for each differ」として、DDR5とLPDDR5/XでCAMM2のピン配置が異なることを明示しています。さらに、取り付け手順に意図的な差を設けて誤装着を防いでいるとも述べています。DDR5版かLPDDR5/5X版かまで一致させる必要があります。
SO-DIMMよりCAMM2のほうが優れているのですか。
JEDECが発表文で挙げているのは、DDR5 SO-DIMMコネクタと比べた場合の設計上の利点3点です。信号品質と無線周波数干渉の改善、消費電力の低減とバッテリー駆動時間の延長を可能にすること、そして同程度のZ高さを保ちながら占有面積を50%削減することです。これらは設計上の狙いの記載であり、特定の製品の測定値ではありません。当サイトは比較測定をしていません。
デスクトップにもCAMM2は関係ありますか。
2023年の発表文は、DDR5 CAMM2の想定用途として性能重視のノートPCと主流のデスクトップの両方を挙げています。ただし、この記事で読んだ範囲では、デスクトップ向けCAMM2を採用した製品の流通状況について述べた一次資料はありません。現時点でデスクトップの主流がDIMMであることは、マザーボードの仕様欄を見れば確認できます。
自分のノートPCがどの形態か、どこで分かりますか。
メーカーの製品仕様ページのメモリ欄です。「オンボード」「はんだ付け」「交換不可」なら購入時の容量で確定、「メモリスロット ×2」ならSO-DIMMの可能性が高く、「CAMM2」「LPCAMM2」ならモジュール式ですが交換部品の供給可否を別途確認する必要があります。記載が無ければメーカーに問い合わせてください。推測で判断しないことが肝心です。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- JEDEC:JEDEC Publishes New CAMM2 Memory Module Standard(2023年12月5日付発表)。JESD318がDDR5 SDRAM CAMM2とLPDDR5/5X SDRAM CAMM2の電気的・機械的要件を1本の文書で定めること、両者の想定用途の区別、コネクタ設計は共通だがピン配置が異なるという注意喚起、取り付け手順の意図的な差による誤装着防止、およびスタッカブルCAMM2(2.85mmと7.5mmの高さ)の説明。2026-09-20閲覧 ↗
- JEDEC:JESD318B の文書ページ。表題「Compression Attached Memory Module (CAMM2) Common Standard」、Release Number: Version 1.14、Published: Nov 2025、対象をDDR5 SDRAM CAMM2およびLP5 SDRAM CAMM2とし、コンピューター、ノートPC、その他のシステムの主記憶として設置される用途を想定するとの記載、および「Free download. Registration or login required.」の表示。規格本体は未取得。2026-09-20閲覧 ↗
- JEDEC:JEDEC(R) Publishes LPDDR5 CAMM2 Connector Performance Standard(2024年10月31日付発表)。PS-007Aの発行、コネクタを「LP5CAMM2」と呼ぶこと、従来のmemory-down方式との対比、JC-11委員会が開発したこと、無償ダウンロードの案内、およびDDR5 SO-DIMMコネクタと比較した利点3点。2026-09-20閲覧 ↗