「自己暗号化SSD」を買っても、Windowsのハードウェア暗号化が使えるとは限らない
SSDの仕様に「自己暗号化(SED)」と書かれていると、Windowsのハードウェア暗号化がそのまま使えるように見えます。ところがMicrosoftは、自己暗号化ハードドライブとWindowsの暗号化ハードドライブは同じ種類の機器ではない、と警告として明記しています。Windows側が求める適合要件があり、さらにドライブの状態、ファームウェアの構成、接続するコントローラー、Windowsのエディションにも条件が付きます。この記事は2026-09-21にMicrosoftのページを読み、買う前と使い始める前に確認すべき条件を整理します。当サイトは実機で検証していません。
公開 · 更新 · FaultNote 編集方針
この記事が役立つ人・作業前の準備
- 自己暗号化をうたうSSDを買おうとしていて、Windowsで活かせるか知りたい人
- ハードウェア暗号化とソフトウェア暗号化のどちらになるのか整理したい人
- 暗号化ハードドライブを起動ドライブにする構成を検討している人
用意するもの
- 候補のSSDの製品ページで、暗号化に関する記載の正確な文言を控える
- Windowsのエディションを確認する(設定 > システム > バージョン情報)
- 起動ドライブにするつもりなら、UEFIの構成(CSMの有無)を確認できるようにする
1. 用語が2つある。そしてMicrosoftはそれを警告として書いている
Microsoftのページは、暗号化ハードドライブをこう定義しています。Encrypted hard drives are a class of hard drives that are self-encrypted at the hardware level and allow for full disk hardware encryption while being transparent to the user. These drives combine the security and management benefits provided by BitLocker Drive Encryption with the power of self-encrypting drives.(原文は英語、訳は当サイトによるものです)
ここまで読むと、自己暗号化ドライブと同じものに見えます。ところが同じページに、警告として次の一節が置かれています。Self-encrypting hard drives and encrypted hard drives for Windows are not the same type of devices: encrypted hard drives for Windows require compliance for specific TCG protocols as well as IEEE 1667 compliance self-encrypting hard drives don't have these requirements
自己暗号化ハードドライブと、Windows向けの暗号化ハードドライブは同じ種類の機器ではない。Windows向けのものは特定のTCGプロトコルへの適合に加えてIEEE 1667への適合を必要とするが、自己暗号化ハードドライブにはこれらの要件がない、という記載です。
そして続けて、It's important to confirm that the device type is an encrypted hard drive for Windows when planning for deployment. 計画の段階で機器の種別を確認することが重要だ、と書かれています。これがこの記事の出発点です。製品ページに「自己暗号化」とあることは、Windowsの暗号化ハードドライブとして扱われる根拠にはなりません。
2. 何が得られるとされているのか
条件を満たした場合に得られるものとして、ページは4つを挙げています。読んでおくと、条件を満たすために手間をかける価値があるかどうかを判断できます。
なお、ここに挙がっているのはMicrosoftが述べている設計上の利点です。当サイトは速度も消費電力も測定しておらず、具体的な数値は示しません。
表は横にスクロールできます →
| Microsoftが挙げる利点 | 記載の要点 |
|---|---|
| Better performance | ドライブコントローラーに統合された暗号化ハードウェアにより、性能低下なしにフルのデータレートで動作できる |
| Strong security based in hardware | 暗号化は常に有効で、暗号化の鍵がハードドライブの外へ出ることはない。利用者の認証はOSとは独立にドライブ側で行われる |
| Ease of use | 暗号化は利用者に対して透過的で、利用者が有効にする必要がない。オンボードの暗号化鍵を使って容易に消去でき、データを再暗号化する必要がない |
| Lower cost of ownership | BitLockerが既存の仕組みで回復情報を保管するため、鍵管理のための新しい基盤が不要。暗号化処理にプロセッサーを使わない |
3. システム要件:買う前と、使い始める前に効く
ページはシステム要件を、データドライブとして使う場合と起動ドライブとして使う場合に分けて示しています。データドライブ側は2項目だけですが、起動ドライブ側にはファームウェアの条件が加わります。
注意すべきは、最初の2項目がどちらにも共通することです。The drive must be in an uninitialized state と The drive must be in a security inactive state。初期化されていない状態、かつセキュリティが非アクティブな状態であること、と書かれています。つまり、すでに使い始めてデータが入っているドライブに後から適用する、という話ではありません。買ってすぐの段階で決めるべき構成です。
起動ドライブの場合の条件も具体的です。UEFI 2.3.1 に基づいていて EFI_STORAGE_SECURITY_COMMAND_PROTOCOL が定義されていること、UEFIでCSM(互換性サポートモジュール)が無効になっていること、常にUEFIからネイティブに起動すること、の3つが加わります。CSMを無効にするという条件は、当サイトのTPMの記事で扱っている条件と同じ方向です。
さらに接続先についての警告があります。All encrypted hard drives must be attached to non-RAID controllers to function properly. 正しく機能させるにはRAIDではないコントローラーに接続しなければならない、という記載です。
表は横にスクロールできます →
| 用途 | Microsoftが挙げる要件 |
|---|---|
| データドライブとして使う | 初期化されていない状態であること/セキュリティが非アクティブな状態であること |
| 起動ドライブとして使う | 上の2つに加えて、UEFI 2.3.1ベースでEFI_STORAGE_SECURITY_COMMAND_PROTOCOLが定義されていること/UEFIでCSMが無効であること/常にUEFIからネイティブに起動すること |
| 接続(共通) | RAIDではないコントローラーに接続すること |
4. エディションの条件
もう1つ、購入判断に直結する条件があります。ページは対応するWindowsのエディションを表で示しており、そこに挙がっているのは Windows Pro、Windows Enterprise、Windows Pro Education/SE、Windows Education の4つです。
つまり、この機能を目当てにドライブを選ぶのであれば、エディションの確認が先に来ます。Homeはこの表に含まれていません。当サイトは、含まれていないことを「動く」とも「動かない」とも言い換えません。表に載っていない、という事実だけを示します。
エディションの違いについては、当サイトのHomeとProの比較記事で扱っています。暗号化まわりでは、デバイスの暗号化とBitLockerの違いをTPMの記事でも整理しています。
05. 買う前の確認順
ここまでを順番にします。1番目で止まることが多いはずです。
そして、この記事が答えないことをはっきりさせておきます。特定のSSDがWindowsの暗号化ハードドライブとして適合しているかどうかは、当サイトには判定できません。製品の仕様に TCG や IEEE 1667 への適合が書かれているか、あるいはメーカーがWindowsの暗号化ハードドライブとして扱えると明記しているかを、購入前にメーカーへ確認してください。
表は横にスクロールできます →
| 確認する順 | 見る場所 | そこで決まること |
|---|---|---|
| 1. Windowsのエディション | 設定 > システム > バージョン情報 | 表に挙がっているのは Pro、Enterprise、Pro Education/SE、Education です |
| 2. その製品が「Windowsの暗号化ハードドライブ」か | 製品仕様、メーカーへの確認 | 自己暗号化という表記だけでは判断できません。TCGとIEEE 1667への適合が要件として挙げられています |
| 3. ドライブの状態 | 初期化前かどうか、セキュリティが非アクティブか | 使い始めたあとで切り替える話ではありません |
| 4. 起動ドライブにするか | UEFIの版、CSMの有無、起動方法 | 起動ドライブでは条件が3つ増えます |
| 5. 接続先 | SATA/NVMeのコントローラーの構成 | RAIDではないコントローラーに接続する必要があると明記されています |
注意点・利用条件
- この記事は実機で検証していません。引用した定義・要件・エディションの条件は、Microsoftが公開している文書の記載です。
- 特定のSSDがWindowsの暗号化ハードドライブとして適合しているかを、当サイトは判定できません。製品仕様の文言とメーカーへの確認が必要です。
- 要件に「初期化されていない状態」が含まれるため、すでにデータが入っているドライブに後から適用する前提では読まないでください。
- 引用した記載は2026-09-21に閲覧したものです。Microsoftのページは改訂されます。
よくある質問
自己暗号化SSDを買えば、Windowsのハードウェア暗号化が使えますか。
そうとは限りません。Microsoftは警告として、自己暗号化ハードドライブとWindows向けの暗号化ハードドライブは同じ種類の機器ではなく、後者は特定のTCGプロトコルとIEEE 1667への適合を必要とするが前者にはこれらの要件がない、と明記しています。
どうやって見分ければよいですか。
Microsoftは、計画の段階で機器の種別がWindowsの暗号化ハードドライブであることを確認することが重要だ、と書いています。製品仕様の文言を読み、必要ならメーカーに確認してください。当サイトは個別の製品について判定しません。
すでに使っているSSDに後から適用できますか。
要件には、ドライブが初期化されていない状態であること、セキュリティが非アクティブな状態であることが挙げられています。使い始めたあとで切り替える前提の記載ではありません。
起動ドライブにする場合、追加の条件はありますか。
あります。UEFI 2.3.1ベースで EFI_STORAGE_SECURITY_COMMAND_PROTOCOL が定義されていること、UEFIでCSMが無効であること、常にUEFIからネイティブに起動すること、の3つが加わると書かれています。
Windows Homeでは使えないのですか。
Microsoftが示す対応エディションの表に挙がっているのは、Windows Pro、Windows Enterprise、Windows Pro Education/SE、Windows Education です。Homeはその表に含まれていません。当サイトはそれ以上の言い換えをしません。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。