配信・録画用にGPUを選ぶ前に:NVENCの世代・本数・同時セッション数とAV1対応を公式表で確認する
配信や録画、動画の書き出しでGPUが使われるとき、働いているのは3Dの演算部ではなく映像エンコーダーという専用回路です。そして「このGPUでAV1のハードウェアエンコードができるか」「同時に何本エンコードできるか」は、好みや相場の話ではなく、NVIDIAがボードごとの表として公開している事実です。この記事は2026-09-20にNVIDIAのVideo Encode and Decode Support Matrixを読み、表の列が何を意味するか、実際のボード4機種の行に何が書かれているか、そして世代の境目がどこにあるかを整理します。あわせてIntel側でCPUの対応を確認できる欄も示します。当サイトはエンコード速度も画質も実測しておらず、製品の優劣は判定しません。表に書かれていることと、書かれていないことを分けるのがこの記事の役目です。
公開 · 更新 · FaultNote 編集方針
この記事が役立つ人・作業前の準備
- 配信や録画のためにGPUを買い足そうとしていて、どの世代から何ができるのか知りたい人
- 手元のGPUでAV1のハードウェアエンコードが使えるかを確認したい人
- 複数の配信・録画を同時に走らせる構成を考えている人
用意するもの
- 手元のGPUの正確な製品名を確認する(タスクマネージャーのパフォーマンスタブ、またはデバイスマネージャー)
- CPUの型番を確認する(内蔵GPU側のエンコーダーを使う場合に必要)
- 使いたいソフトが対応しているエンコーダーの名前(NVENC、Quick Syncなど)を、ソフトの設定画面で確認しておく
1. GPUの映像エンコーダーは、3D性能とは別の欄で決まる
GPUの製品ページで目立つのはコア数やメモリ容量ですが、配信や録画で使われるのは映像エンコーダーという専用回路です。NVIDIAではこれをNVENCと呼び、ボードごとの対応を開発者向けの表(Video Encode and Decode Support Matrix)で公開しています。
この表がなぜ購入判断に効くかというと、同じ世代の中でも搭載されるNVENCの本数が違い、対応するコーデックは世代で切り替わるからです。3D性能の順位とは別の軸なので、上位モデルを買えば自動的に解決する、という話にもなりません。
表は Consumer (GeForce)、Professional (NVIDIA RTX / Quadro)、Server (Data Center)、DGX、Jetson / IGX の区分に分かれています。自作PCやゲーミングPCの読者が見るのは最初の区分です。
2. 表の列が意味していること
列の見出しは略語が多いので、順に対応させます。BOARD(ボード名)、FAMILY(アーキテクチャ名)、NVENC Generation(NVENCの世代)、Desktop/Mobile(デスクトップ用かモバイル用か)、# OF CHIPS(チップ数)、Total # of NVENC(NVENCの総数)、Max # of concurrent sessions(同時セッション数の上限)が前半です。
後半はコーデック別の対応で、H.264 (AVC) の YUV 4:2:0 / 4:2:2 / 4:4:4 / Lossless、H.265 (HEVC) の 4K YUV 4:2:0 / YUV 4:2:2 / 4K YUV 4:4:4 / 4K Lossless / 8K、HEVC 10-bit support、HEVC B Frame support、そして AV1 YUV 4:2:0 が並びます。各セルは YES か NO です。
ここで押さえるべきは、対応の有無が「コーデック名」ではなく「コーデックと色差サンプリングの組み合わせ」で書かれていることです。H.264に対応しているかどうかではなく、H.264の4:2:2に対応しているかどうかが別の列になっています。編集用途で4:2:2の素材を扱う人には、この区別が購入判断そのものになります。
3. 実際の4行を読む:世代の境目はここにある
2026-09-20に表から読み取った4機種の行を、そのまま並べます。数値と YES/NO は表の記載です。
読み取れることは3つあります。第1に、AV1のハードウェアエンコードの境目はAmpereとAda Lovelaceの間にあります。GeForce RTX 3060(Ampere、NVENC 7th Gen)の AV1 YUV 4:2:0 は NO、GeForce RTX 4060(Ada Lovelace、8th Gen)は YES です。AV1で配信・録画したいなら、この1列が買い替えの理由になり得ます。
第2に、4:2:2の対応はさらに新しい世代の話です。H.264 (AVC) YUV 4:2:2 と H.265 (HEVC) YUV 4:2:2 の列は、RTX 3060 と RTX 4060 ではどちらも NO、Blackwell世代の RTX 5060 と RTX 5090 では YES と記載されています。
第3に、NVENCの本数は上位モデルで増えます。RTX 5090 の Total # of NVENC は 3、RTX 5060 は 1 です。ただし同時セッション数の上限は、この4行ではいずれも 12 と記載されており、本数の違いとは別の欄です。
表は横にスクロールできます →
| ボード | FAMILY/NVENC Generation | Total # of NVENC/Max # of concurrent sessions | H.264 4:2:2/HEVC 4:2:2 | AV1 YUV 4:2:0 |
|---|---|---|---|---|
| GeForce RTX 5090 | Blackwell/9th Gen | 3/12 | YES/YES | YES |
| GeForce RTX 5060 | Blackwell/9th Gen | 1/12 | YES/YES | YES |
| GeForce RTX 4060 | Ada Lovelace/8th Gen | 1/12 | NO/NO | YES |
| GeForce RTX 3060 | Ampere/7th Gen | 1/12 | NO/NO | NO |
4. 同時セッション数は、GeForceとProfessionalで書き方が違う
Max # of concurrent sessions は、同時に走らせられるエンコードセッションの上限です。上の4機種ではいずれも 12 と記載されています。これは配信と録画を同時に行う、複数の入力を同時に処理するといった構成で効いてくる数字です。
同じ表の Professional (NVIDIA RTX / Quadro) の区分を見ると、この欄の書き方が変わります。例えば NVIDIA RTX PRO 500 Blackwell Generation Laptop GPU の行では、Max # of concurrent sessions が Unrestricted と記載されています。数値ではなく「制限なし」という語です。
つまり、同時セッション数は製品区分によって扱いが違うということが、表そのものから読み取れます。当サイトはこの上限の実測も、制限に達したときの挙動の確認も行っていません。ここで示せるのは表の記載だけです。
なお、この表はNVIDIAが開発者向けに公開しているものです。個々のソフトがどのエンコーダーをどう使うかは、ソフト側の実装と設定の話であり、表からは分かりません。
5. Intel側で確認できる欄と、確認できなかったこと
CPU内蔵の映像エンジンを使う場合、Intelでは Intel® Quick Sync Video という名前が付いています。対応の有無はCPUの仕様ページ(ARK)で確認できます。2026-09-20に Intel Core Ultra 9 プロセッサー 285K の仕様ページを読んだところ、Intel® Quick Sync Video の欄は Yes でした。
ただし、この欄から読み取れるのは有無だけです。どのコーデックに、どの色差サンプリングで対応するかという内訳は、このページには書かれていませんでした。NVIDIAの表のような粒度の情報を、同じ場所では得られないということです。
AMDについては、この記事で参照できる一次情報を取得できませんでした。Radeon RX 9070 XT の製品ページとして試したURLは404を返しています。したがってこの記事は、AMDのGPUの映像エンジンについて何も述べません。他社との比較や順位付けも行いません。
購入前の確認は、次の順番で行うのが確実です。使いたいコーデック(H.264/HEVC/AV1)と色差サンプリングを決める。候補GPUの行を公式表で引く。同時に何本処理したいかを決めて同時セッション数の欄を見る。最後に、使うソフトの設定画面で、そのエンコーダーが選べることを確認する。
表は横にスクロールできます →
| 確認したいこと | 確認できる場所 | この記事で確認できた内容 |
|---|---|---|
| NVIDIA GPUのコーデック別対応 | NVIDIA の Video Encode and Decode Support Matrix | ボード別に YES/NO まで記載あり |
| NVIDIA GPUの同時セッション上限 | 同表の Max # of concurrent sessions 欄 | GeForceの4機種はいずれも12、Professionalの例は Unrestricted |
| IntelのCPUがQuick Syncに対応するか | Intel ARK の Intel® Quick Sync Video 欄 | Core Ultra 9 285K は Yes。コーデック別の内訳はこの欄にない |
| AMDのGPUの映像エンジン | AMDの製品ページ | 当サイトは該当ページを取得できず(試したURLは404)。記載なし |
| 実際のエンコード速度・画質 | 測定が必要 | 当サイトは測定しておらず、数値も比較も示さない |
注意点・利用条件
- 当サイトはエンコード速度、画質、消費電力のいずれも実測していません。この記事に性能の比較値はありません。
- 対応表の内容は2026-09-20時点の記載です。表は製品追加や訂正で更新されます。購入時点で開き直してください。
- 表が示すのはハードウェアの対応可否です。実際にその機能が使えるかは、ドライバーと使用するソフトの実装にも依存します。ソフト側の設定画面で選べることを必ず確認してください。
- AMDのGPUについては一次情報を取得できておらず、この記事は何も述べていません。比較や優劣の判断は行っていません。
- Intel ARK の Intel® Quick Sync Video 欄は対応の有無だけを示し、コーデック別の内訳を示していません。当サイトはその内訳を他の出典で補っていません。
- 同時セッション数の上限に達したときの挙動は確認していません。表の記載を紹介するにとどめています。
よくある質問
手持ちのRTX 3060でAV1配信はできますか。
ハードウェアエンコードについては、2026-09-20時点の対応表で GeForce RTX 3060(Ampere、NVENC 7th Gen)の AV1 YUV 4:2:0 の欄が NO と記載されています。GeForce RTX 4060(Ada Lovelace、8th Gen)は YES です。ソフトウェアエンコードの可否や、その負荷については当サイトは測定していません。
上位モデルを買えばエンコードが速くなりますか。
この記事の出典からそれは言えません。分かるのは、NVENCの本数が製品によって違うこと(RTX 5090 は Total # of NVENC が 3、RTX 5060 は 1)と、コーデック対応が世代で変わることだけです。速度は当サイトが測定していないため、何も述べません。
配信と録画を同時にやりたいのですが、何本まで可能ですか。
表の Max # of concurrent sessions の欄が該当します。この記事で読んだGeForceの4機種はいずれも 12 と記載されていました。Professional 区分では、例えば NVIDIA RTX PRO 500 Blackwell Generation Laptop GPU の行が Unrestricted と記載されています。ただし実際に何本同時に回せるかは、ソフトの実装や設定、GPU全体の余力にも左右されます。
CPUの内蔵グラフィックスでもエンコードできますか。
Intelの場合、対応の有無は Intel ARK の Intel® Quick Sync Video 欄で確認できます。2026-09-20に読んだ Core Ultra 9 プロセッサー 285K は Yes でした。ただしこの欄にはコーデック別の内訳がなく、どの形式にどこまで対応するかはこのページからは分かりません。
4:2:2対応というのは何が違うのですか。
色差信号をどれだけ持つかの違いで、表では別の列になっています。2026-09-20時点の記載では、H.264 (AVC) YUV 4:2:2 と H.265 (HEVC) YUV 4:2:2 は RTX 3060 と RTX 4060 で NO、Blackwell世代の RTX 5060 と RTX 5090 で YES です。4:2:2の素材を扱う予定があるなら、この列を先に見てください。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- NVIDIA:Video Encode and Decode Support Matrix。NVENC側の区分(Consumer (GeForce)/Professional (NVIDIA RTX / Quadro)/Server (Data Center)/DGX/Jetson / IGX)、列の構成(BOARD、FAMILY、NVENC Generation、Desktop/Mobile、# OF CHIPS、Total # of NVENC、Max # of concurrent sessions、H.264とH.265の各サンプリング、HEVC 10-bit support、HEVC B Frame support、AV1 YUV 4:2:0)、および本文で引用した GeForce RTX 5090/5060/4060/3060 と NVIDIA RTX PRO 500 Blackwell Generation Laptop GPU の各行の記載。2026-09-20閲覧 ↗
- Intel ARK:Intel® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285K の仕様。Intel® Quick Sync Video 欄が Yes であること、および同欄にコーデック別の内訳がないこと。2026-09-20閲覧 ↗