自作PC・デスクトップPC用UPSの選び方:正弦波出力が必要な理由とVA・Wの容量計算
停電や瞬断でデスクトップPCが落ちるのを防ぐためにUPSを買うとき、確認する順番は「出力波形」「容量(VAとW)」「バックアップ時間」「自動シャットダウン」の4つです。自作PCで一般的なPFC回路内蔵の電源ユニットには正弦波出力のUPSを選び、容量はVAとWの両方で余裕を持たせ、停電時に安全にシャットダウンできる時間を確保します。長時間PCを使い続けるための機器ではない点も押さえておきます。
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この記事が役立つ人・作業前の準備
- 自作PCやゲーミングPCを停電・瞬断から守りたいが、正弦波と矩形波、VAとWの違いが分からずUPSの型番を決められない人
- PCとモニター、NASやルーターを1台のUPSにつなぐ予定で、必要な容量とバックアップ時間を計算してから購入したい人
用意するもの
- つなぐ機器ごとの消費電力(PCメーカーの仕様にある最大消費電力、またはワットチェッカーなどで高負荷時に測った値)とモニター・周辺機器の定格消費電力
- 停電を検知してからPCを安全にシャットダウンし終えるまでにかかる時間の目安
- PCの電源ユニットの型番(PFC回路の有無を製品仕様で確認するため)
1. デスクトップPCでUPSに期待できること:数分間でシャットダウンする時間を作る
UPSは停電や電圧の異常が起きたときに、内蔵バッテリからしばらく電力を供給する機器です。オムロンの選定方法は、電源異常時にサーバーやPCなどの接続機器をシャットダウンするために必要なバックアップ時間を決め、その2倍以上を確保できるかを確認するよう求めています。デスクトップPC向けの小型UPSは、たとえばオムロンBY80S(800VA/500W)の最大負荷時のバックアップ時間が4分(仕様)で、PCを長時間使い続ける用途ではなく、作業を保存して電源を切るまでの時間を作る用途です。
給電方式によって、通常時の電力の流れと停電時の切り替わり方が変わります。オムロンは常時インバータ給電方式を出力波形が正弦波でバックアップ切替時の瞬断がない方式、ラインインタラクティブ方式を常時商用給電方式にAVR(電圧安定化)機能を加えた方式、常時商用給電方式を正弦波出力(BV/BW/BYシリーズ)と矩形波出力(BZシリーズ)がある方式と説明しています。常時商用給電方式のBYシリーズの切替時間は10ms以内(仕様)です。
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| 給電方式(オムロンの分類) | 出力波形 | 特徴(オムロンの説明) | 向く機器の例 |
|---|---|---|---|
| 常時インバータ給電方式 | 正弦波 | バックアップ切替時の瞬断がない | より安定したAC電源を必要とする機器 |
| ラインインタラクティブ方式 | 正弦波 | 常時商用給電方式にAVR(電圧安定化)を追加。通常時も出力電圧をAC100Vに近づける | 電圧の変動が気になる環境のPC・サーバー |
| 常時商用給電方式(正弦波出力) | 正弦波 | BV/BW/BYシリーズ。BYシリーズの切替時間は10ms以内 | パソコン、小型サーバー |
| 常時商用給電方式(矩形波出力) | 矩形波 | BZシリーズ。入力波形が正弦波のみに対応する機器には使えない | ハブ・ルーターなどのネットワーク機器、小型NASなどの周辺機器 |
- UPSで守りたい状況を「停電時に作業を保存してシャットダウンする」「瞬断で再起動しないようにする」のどちらかに決めます。
- 停電を検知してからPCのシャットダウンが終わるまでの時間を見積もり、その2倍を必要なバックアップ時間とします。
- より安定した電源が必要な機器なら常時インバータ給電方式、PCと周辺機器なら常時商用給電方式またはラインインタラクティブ方式の正弦波出力から候補を探します。
2. 出力波形:PFC回路内蔵のATX電源には正弦波出力のUPSを選ぶ
オムロンは、PFC(力率改善)回路を搭載した電源は入力電圧波形が正弦波であることを前提に設計されており、矩形波ではうまく動作しないことがあるとして、PCやサーバーを守るUPSには正弦波出力タイプを強く勧めています。同社は常時商用給電方式のUPSに自作PCなどで使われるPFC回路搭載のATX電源を4機種つなぎ、それぞれ300W負荷でバックアップ運転ができるかを評価しました。正弦波出力のBY50Sでは4機種すべて正常でしたが、矩形波出力のUPS4機種との組み合わせでは、UPSの出力停止、UPSの故障、ATX電源の停止が合計7件発生しました。同社は、トラブルが起きるかどうかは実際に接続してみるまで分からないため、PFC回路搭載の電源には正弦波出力UPSを推奨するとしています。
CyberPower(米国サイト)も、デスクトップやワークステーションのActive PFC電源は電力会社が供給するような正弦波のAC電源を必要とし、エントリー向けUPSの疑似正弦波(simulated/stepped sine wave)は瞬間的に出力がゼロになる区間を作るため、停電時にActive PFC電源がその電力を認識できず、予期しないシャットダウンや部品へのストレスにつながる可能性があると説明しています。製品名に「正弦波」「Sine Wave」「PFC対応」と書かれているか、仕様表のバックアップ時の出力波形が正弦波かを確認します。
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| ATX電源(オムロンの試験、300W負荷) | 正弦波出力 BY50S | 矩形波出力のUPS4機種 |
|---|---|---|
| A社 定格650W | 正常 | UPS出力停止、ATX電源停止(2機種)、UPS故障 |
| B社 定格900W | 正常 | 2機種は正常、UPS出力停止、UPS故障 |
| C社 定格525W | 正常 | 3機種は正常、UPS出力停止 |
| D社 定格550W | 正常 | 4機種すべて正常 |
- PCの電源ユニットの製品仕様で、PFC(Active PFC)回路の有無を確認します。記載がない場合も、PFC回路搭載として扱います。
- 候補のUPSの仕様表で「出力波形(バックアップ時)」が正弦波かを確認し、矩形波・疑似正弦波の製品はPC用の候補から外します。
- ルーターやハブだけを守る別のUPSを選ぶ場合は、接続機器のメーカーが矩形波での動作を認めているかを確認します。
3. 容量:VAとWの両方で計算し、1.2〜1.5倍の余裕を取る
UPSの出力容量は「500VA/300W」のようにVAとWの2つで表示されます。オムロンは、接続機器のVAの総和とWの総和を計算し、その両方よりも大きいUPSが候補になると説明し、510VA/290Wや490VA/310Wの機器には500VA/300WのUPSは選べず1ランク上が必要という例を示しています。機器の力率が分からない場合は、VAの総容量を出すときは力率0.6、Wの総容量を出すときは力率1.0で計算するよう指定しています。つまりWしか分からない機器はW÷0.6をVA、VAしか分からない機器はVAの値をそのままWとして合計します。さらに、機器の総容量より1.2〜1.5倍程度大きな容量のUPSを選ぶ必要があるとしています。
PCの消費電力には、電源ユニットの定格出力(750Wなど)ではなく、PCメーカーの仕様にある最大消費電力か、高負荷時にコンセント側で測った値を使います。電源ユニットの定格出力はPC内部へ供給できる直流側の上限で、変換損失があるためコンセント側の消費電力とは一致しません。下の表は、PCの高負荷時が350W、モニターが30W(どちらもWだけが分かっている)という仮の例をオムロンの計算方法で計算したものです。
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| 項目(仮の例) | W | VA(W÷0.6) | 判断 |
|---|---|---|---|
| PC(高負荷時) | 350W | 約583VA | Wだけが分かる機器として換算 |
| モニター | 30W | 50VA | Wだけが分かる機器として換算 |
| 合計 | 380W | 約633VA | この値を超えるだけでは余裕が足りない |
| 1.2〜1.5倍 | 456〜570W | 約760〜950VA | BY80S(800VA/500W)は1.2倍を満たす。1.5倍を満たすのはBY120S(1200VA/720W) |
- つなぐ機器ごとにVAとWを書き出し、片方しか分からない機器はオムロンの力率(VAは0.6、Wは1.0)で換算します。
- VAとWをそれぞれ合計し、1.2倍と1.5倍の値を出します。
- VA・Wの両方が合計の1.2倍以上、できれば1.5倍以上あるUPSを候補にします。
4. バックアップ時間:シャットダウン時間の2倍を、実際の負荷で確認する
仕様表の「バックアップ時間」は最大負荷時の値なので、実際の負荷に近い値はメーカーのバックアップ時間の目安表で確認します。オムロンのバックアップ時間の目安(PDF)では、BYシリーズの400W負荷時はBY120Sが11分、BY80Sが6分です。オムロンは、バッテリが劣化するとバックアップ時間が初期値の半分以下になるため、必要時間の2倍以上のゆとりを勧めています。仕様表のバックアップ時間は周囲温度20℃・バッテリ初期状態の値です。
上の仮の例(380W)で、停電からシャットダウン完了まで3分かかるなら、必要なバックアップ時間は6分です。BY80Sは400W列で6分とちょうどで、バッテリの劣化を考えると余裕が少なく、BY120Sは11分で余裕があります。モニターの電源を切る、周辺機器を別のコンセントに分けるなど、UPSにつなぐ機器を減らすと同じUPSでも時間が延びます。価格はオムロンの仕様ページに載っているメーカー希望小売価格で、販売店の実売価格ではありません。
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| オムロン BYシリーズ(常時商用給電・正弦波) | 出力容量 | バックアップ時間(最大負荷時、仕様) | 目安表の200W/300W/400W/500W | メーカー希望小売価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| BY35S | 350VA/210W | 6分(210W) | 6.5分/—/—/— | 40,700円 |
| BY50S | 500VA/300W | 3.5分(300W) | 6.5分/3.5分/—/— | 47,410円 |
| BY80S | 800VA/500W | 4分(500W) | 15分/9分/6分/4分 | 77,880円 |
| BY120S | 1200VA/720W | 4分(720W) | 27分/17.5分/11分/7.5分 | 101,310円 |
- つなぐ機器の合計W以上で最も近い列を、メーカーのバックアップ時間の目安表から探します。
- その列の時間が、シャットダウンに必要な時間の2倍以上あるかを確認します。
- 足りない場合は、1ランク上の容量にするか、UPSにつなぐ機器を減らしてから再計算します。
5. 自動シャットダウン・つないではいけない機器・バッテリ交換
PCの前にいないときの停電に備えるには、UPSとPCをケーブルでつなぎ、自動シャットダウンソフトを設定します。オムロンは選定の最後に、接続機器がPCやサーバーの場合に最も多く必要になるのが停電時の自動シャットダウンソフト(と接続ケーブル)だとして、使うUPSとOSに合うソフト・ケーブルを確認するよう求めています。BYシリーズの製品ページは、自動シャットダウンソフトを無償でダウンロードできること、期待寿命4〜5年のバッテリを搭載していることを示しています。
オムロンは、絶縁トランス・変圧トランス・コイル・モーターなどの誘導性の機器、掃除機のように大きなエネルギーが返ってくる負荷、レーザープリンターや複写機など間欠的に大電流が流れる装置をUPSの出力側につながないよう注意しています。デスクの電源タップをそのままUPSにまとめるのではなく、停電時に動かす必要がある機器だけをUPSのバックアップ用コンセントにつなぎます。
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| 確認すること | 理由(オムロンの資料) | 対応 |
|---|---|---|
| 自動シャットダウンソフトと接続ケーブル | PC・サーバーをつなぐ場合に最も多く必要になるオプション | UPSとOSに対応するソフトを入手し、停電を想定して動作を試す |
| レーザープリンター・複写機 | 間欠的に大電流が流れる | UPSにつながない |
| トランス・モーター・掃除機など | 過電流でUPSが故障することがある | UPSにつながない |
| バッテリの劣化 | 劣化するとバックアップ時間が初期値の半分以下になる。BYシリーズの期待寿命は4〜5年 | 交換時期を控え、交換用バッテリの型番を確認する |
- UPSのメーカーの対応表で、使っているWindowsのバージョンに対応する自動シャットダウンソフトと接続ケーブル(USBなど)を確認します。
- ソフトを設定したら、PCの作業を保存したうえでUPSの入力プラグを抜き、シャットダウンが始まることを確認します。
- プリンターや電気ヒーターなどはUPSではなく通常のコンセントにつなぎ、バッテリの交換時期を製品の表示や購入日から控えておきます。
6. 購入前のチェック表
UPSは容量が大きいほど価格も大きさも増えるため、必要な条件を満たす最小の容量を選びます。日本国内で使う場合は、定格入力電圧がAC100Vで、差し込みプラグが家庭のコンセントに合うことも確認します(オムロンBYシリーズはAC100V、NEMA 5-15P)。この記事は実売価格の調査や停電試験を行っていないため、購入日に販売店の価格と在庫、保証条件を確認してください。PCの電源ユニット自体の容量の選び方は、PC電源の選び方の記事を参照してください。
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| 確認項目 | 条件 | どこで見るか |
|---|---|---|
| 出力波形(バックアップ時) | PFC回路内蔵の電源をつなぐなら正弦波 | UPSの仕様表 |
| 出力容量 | 合計VA・Wの両方の1.2〜1.5倍程度 | UPSの仕様表、接続機器の仕様 |
| バックアップ時間 | 実際の負荷でシャットダウン時間の2倍以上 | メーカーのバックアップ時間の目安表 |
| 入力電圧・プラグ | AC100V、家庭のコンセントに合う形状 | UPSの仕様表 |
| 自動シャットダウン | 使っているOSに対応するソフトとケーブル | メーカーのソフト対応表 |
- つなぐ機器、合計VA・W、必要なバックアップ時間を1枚にまとめます。
- 候補の型番ごとに、出力波形、VA・W、目安表のバックアップ時間、入力電圧とプラグ、自動シャットダウンソフトの対応を仕様表で埋めます。
- すべてを満たす型番の中から、価格・保証・バッテリ交換費用を購入日に比べます。
注意点・利用条件
- 仕様・価格・バックアップ時間は2026年9月13日にオムロンとCyberPowerの公開資料で確認した内容です。価格はメーカー希望小売価格で、実売価格ではありません。
- この記事は停電試験や消費電力の実測を行っていません。容量の計算例は仮の数値です。バックアップ時間はメーカーの参考値で、バッテリの状態や周囲温度で変わります。
- CyberPowerの製品ページは米国向けの製品群です。日本で使う場合は入力電圧とプラグ形状が国内のコンセントに合うかを確認してください。
よくある質問
安い矩形波(疑似正弦波)のUPSでもPCは守れますか?
オムロンの試験では、PFC回路搭載のATX電源を矩形波出力のUPSにつないだ組み合わせで、UPSの出力停止や故障、ATX電源の停止が起きました。問題なく動いた組み合わせもありましたが、同社は実際に接続するまで分からないとして、PFC回路搭載の電源には正弦波出力UPSを推奨しています。
750Wの電源ユニットなら、750W以上のUPSが必要ですか?
電源ユニットの定格出力はPC内部へ供給できる上限で、実際の消費電力ではありません。PCメーカーの最大消費電力か、高負荷時にコンセント側で測った値を使い、オムロンの方法でVAとWを計算して1.2〜1.5倍の余裕を取ります。
UPSがあれば停電中もゲームを続けられますか?
デスクトップ向けの小型UPSは、たとえばオムロンBY80Sの最大負荷時のバックアップ時間が4分(仕様)です。停電中に使い続けるための機器ではなく、作業を保存してシャットダウンするまでの時間を作る機器として選びます。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- オムロン ソーシアルソリューションズ:UPS選定方法 ↗
- オムロン ソーシアルソリューションズ:UPSの給電方式 ↗
- オムロン:PFC電源搭載機器へのUPSバックアップ運転は、正弦波出力を推奨します(PDF) ↗
- オムロン:BY120S/BY80S/BY50S/BY35S 製品情報 ↗
- オムロン:BY120S/BY80S/BY50S/BY35S 仕様 ↗
- オムロン:バックアップ時間の目安(PDF) ↗
- CyberPower: Active Power Factor Correction Supplies for IT Equipment ↗
- CyberPower: PFC Sinewave UPS Systems ↗