IPS・VA・TN・OLEDの違いと「1ms」の読み方:パネル方式と応答速度の表記を仕様表で確認する
モニターのパネル方式は仕様表の1行ですが、視野角・コントラスト・応答の傾向をまとめて決めます。EIZOの解説によれば、TN方式は駆動電圧とコストが低い一方で見る角度による色や輝度の変化が大きく、VA方式は電圧OFF時にバックライト光をほぼ完全に遮れるためコントラスト比を高くしやすく、IPS方式は液晶分子を横方向に回転させるため視野角による変化が少ない代わりにコントラスト比・輝度・応答速度を高めにくい、という違いがあります。応答速度の数字はさらに注意が必要です。EIZOの用語解説は、一般に表記される応答速度が輝度10%から90%への変化と90%から10%への変化の合計で、中間階調どうしの応答時間を含まないため「この数値だけでは実際の動画再生に適しているとは断言できない」と述べています。実際、ASUSの現行機種でも「1ms(GTG)」と「1ms MPRT」という別の測り方の表記が併存します。この記事は、方式の特性と数字の読み方を仕様表の実例で結び付けます。
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この記事が役立つ人・作業前の準備
- ゲーミングモニターや作業用モニターを選んでいて、IPS・VA・TN・OLEDのどれにするか決めかねている人
- 「1ms」「0.03ms」といった応答速度の表記が機種ごとに何を指しているのか分からない人
- 残像やにじみが気になり、オーバードライブ設定を触るべきか判断したい人
用意するもの
- 候補機種の仕様表(パネル方式、コントラスト比、応答速度の表記とその単位、最大リフレッシュレート)
- 主な用途(対戦ゲーム、映像や写真、事務作業、暗い部屋での映画鑑賞など)と設置環境の明るさ
- 同じ画面を横や斜めから見る機会があるか(複数人で見る、画面が大きい、視線が斜めになる配置かどうか)
1. 方式で変わるのは視野角・コントラスト・応答の傾向
EIZOの解説記事(2005年10月7日にITmediaへ掲載された内容をEIZOライブラリーが再掲)は、液晶パネルの駆動方式をTN・VA・IPSの3種類に大別し、「駆動方式の違いが大きく影響するのは、視野角と応答速度の特性である」と述べています。TN方式は液晶分子の角度でバックライト光量を調整するため、見る角度によって透過する光量が変わり、色を重視する用途には向かないとされます。VA方式は電圧OFFのときにバックライト光が偏光板でほぼ完全に遮断されるため「かなり純粋な黒を表現でき、コントラスト比を高くしやすい」一方、視野角の弱点はTN方式と同様だと書かれています。IPS方式は水平に寝かせた液晶分子を横方向に回転させるため視野角による輝度・色変化が少なく、弱点としてコントラスト比・輝度・応答速度を高くしにくい点が挙げられています。
この傾向は現行製品の公称値にも表れます。ASUSの仕様表では、IPSのProArt PA278CGVがコントラスト比(標準)1000:1、VAのTUF Gaming VG27WQ1Bが3000:1、WOLEDのROG Swift OLED PG27AQDMが1,500,000:1(標準)と桁違いの値です。自発光のOLEDは黒を消灯で表現できるため、コントラストの軸ではLCDと同じ土俵にありません。一方で、OLEDには焼き付きへの配慮(ASUSは「ASUS OLED Care」を仕様に明記)という別の検討項目が加わります。
応答の傾向についてもEIZOの記事は具体的です。TN方式は立ち上がり(黒→白)が遅く立ち下がり(白→黒)が速い、さらに中間調の応答速度が急激に低下するとし、VA方式も同じ傾向で中間調では立ち上がり以上に遅くなると説明しています。IPS方式については「階調全域で応答速度のバラつきが少ない」という特徴を挙げています。中間調の応答を改善する手段としてオーバードライブが挙げられており、EIZOの用語解説はこれを「液晶画素の動作時にかける電位差を大きくすることによって応答速度を向上させる技術」と定義しています。
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| 方式 | EIZOが挙げる特徴 | 現行仕様表の例(ASUSの公称値) |
|---|---|---|
| TN | 駆動電圧とコストが低い。視野角による色・輝度変化が大きく、中間調の応答が急に遅くなる傾向 | NVIDIAの対応一覧では今もTN表記の機種が残る(第3章の集計) |
| VA | 電圧OFF時にほぼ完全に遮光でき、コントラスト比を高くしやすい。視野角の弱点はTNと同様 | TUF Gaming VG27WQ1B:VA、コントラスト比(標準)3000:1、1500R、165Hz |
| IPS | 視野角による輝度・色変化が少ない。コントラスト比・輝度・応答速度は高くしにくいが、階調全域でのばらつきは少ない | ProArt PA278CGV:IPS、コントラスト比(標準)1000:1、144Hz/TUF VG279QM:Fast IPS、1000:1、280Hz |
| OLED(有機EL) | 液晶ではないため上記の駆動方式の分類には含まれない(自発光) | ROG Swift OLED PG27AQDM:WOLED、コントラスト比(標準)1,500,000:1、240Hz、OLED Careの記載あり |
| 共通の注意 | EIZOの記事は2005年10月7日掲載分の再掲。仕組みの説明と、当時の市場動向の記述は分けて読む | コントラスト比や輝度はいずれもメーカー公称値(標準値) |
2. 「1ms」の読み方:GTGとMPRTは別の測り方
EIZOの用語解説は応答速度を、画素が消えている状態から点灯するまでの時間と、点灯から消えるまでの時間の合計と定義し、「一般にはパネルの輝度10%から90%への変化の時間と、90%から10%への変化の時間の合計を表記しています」と書いています。そのうえで、一般に言われている応答速度には中間階調から中間階調、中間階調から明部・暗部への応答時間が含まれていないため、「この数値だけでは実際の動画再生に適しているとは断言できません」と明言しています。カタログの数字を万能の指標として扱わない、という前提はメーカー自身が示しているわけです。
実際の仕様表では、同じ「1ms」でも測り方が違います。ASUSのTUF Gaming VG279QMは「Response Time : 1ms(GTG)」、TUF Gaming VG27WQ1Bは「Response Time : 1ms MPRT」と書かれています。GTGは中間階調間(Gray to Gray)の遷移時間、MPRT(Motion Picture Response Time)は動いている絵の残像時間を表す別の指標で、後者はバックライトの点滅(ストロボ)などの手法でも短くできます。ASUSのOLED機種PG27AQDMは「0.03ms(GTG)」で、桁が2つ違います。まず単位ではなく括弧の中を読んでください。
この問題に対してVESAはClearMRという測定制度を用意しています。ClearMRは高速度カメラで動くテストパターンを撮影し、はっきり見えている画素とぼけている画素の比(CMR)を求めるもので、ClearMR 7000なら「ぼけた画素に対して65〜75倍(6500〜7500%)はっきりした画素が多い」という定義です。試験は常温・出荷時設定・ネイティブ解像度・最大フレームレートで行われ、公平性のためバックライトのストロボは無効化され、オーバーシュート・アンダーシュートにも上限が課されます。VESAはFAQで、MPRTは10%から90%の間だけを測るといった単純化の仮定があるため視覚的な性能との相関が弱いと述べ、ClearMRは表示技術に依存せずLCDでもOLEDでも同じ方法で比較できると説明しています。
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| 表記 | 何を測っているか(公式の説明) | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 応答速度(一般表記) | EIZO:輝度10%→90%と90%→10%の変化時間の合計 | 中間階調間の応答は含まれないとEIZO自身が明記している |
| GTG(Gray to Gray) | 中間階調どうしの遷移時間。ASUS VG279QMは1ms(GTG)、PG27AQDMは0.03ms(GTG) | 測定条件(オーバードライブ設定など)はメーカーの条件に依存する |
| MPRT | 動いている絵の残像時間。ASUS VG27WQ1Bは1ms MPRT | VESAはMPRTの単純化の仮定が視覚性能との相関を弱めると指摘。ストロボ点灯で短くできる |
| オーバードライブ | EIZO:電位差を大きくして応答速度を上げる技術 | 強くしすぎると行き過ぎ(オーバーシュート)が出る。ClearMRの試験でも上限が課されている |
| VESA ClearMR | 高速度カメラでCMR(明瞭な画素とぼけた画素の比)を測る。ClearMR 3000〜21000の階層 | ストロボ無効・出荷時設定・最大フレームレートという共通条件で測られる |
| ClearMRの階層例 | ClearMR 7000=CMR 6500〜7500(65〜75倍)。数字が大きいほどぼけが少ない | VESAは「60Hzの事務用ディスプレイの多くは最下位の3000にも満たない」と説明している |
3. 実際に売られているのはどの方式か(2026年9月19日の集計)
方式の一般論と、いま買える製品の分布は別です。NVIDIAが公開している対応モニター一覧をブラウザーで描画し、2026年9月19日時点の表の行を数えました(見出しと絞り込み行を除く1,357行。集計スクリプトと取得データは作成記録に保存しています)。NVIDIAの表の転記であり、当サイトの実機調査ではありません。
G-SYNC Compatibleの1,234機種では、パネル欄の表記はIPSが775機種、OLED系(OLED、QD-OLED、QDOLED、QD OLED、WOLED、Transparent OLEDの表記を合算)が399機種、TNが38機種、VAが11機種、MiniLED系が8機種、MVAが2機種、Nano IPSが1機種でした。専用モジュールを積むG-SYNCの92機種は内訳が異なり、IPSが44機種、TNが31機種、VAが11機種、IPS/Pulsar表記が5機種、E-TNが1機種です。G-SYNC ULTIMATEの24機種はIPSが17、VAが5、OLEDが2でした。
この数字は、EIZOの用語解説にある「一般的なPC用モニターに最も採用されているのはTNパネル」という記述と印象が異なります。EIZOの用語解説ページには日付の表記がなく、対象も「一般的なPC用モニター」でゲーミング向けに限定されていません。ここでは2つを置き換えるのではなく、ゲーミング用途の対応リストという限定された母集団では現在IPSとOLEDが大半を占めている、という観測として扱ってください。
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| 区分(NVIDIA一覧・2026年9月19日) | パネル欄の内訳 | 読み取れること |
|---|---|---|
| G-SYNC Compatible(1,234機種) | IPS 775、OLED系 399、TN 38、VA 11、MiniLED系 8、MVA 2、Nano IPS 1 | ゲーミング向けの選択肢は事実上IPSかOLEDが中心 |
| G-SYNC(専用モジュール・92機種) | IPS 44、TN 31、VA 11、IPS/Pulsar 5、E-TN 1 | 低遅延を重視する古参モデルではTNの比率が高い |
| G-SYNC ULTIMATE(24機種) | IPS 17、VA 5、OLED 2 | HDRを前面に出す区分でもIPSが中心 |
| G-SYNC Compatible TV(7機種) | すべてOLED | テレビ側はOLEDに集中している |
| 集計の前提 | 1,357行を区分ごとに数えた。パネル欄はNVIDIAの表記をそのまま分類(表記ゆれは合算を明示) | NVIDIAの掲載は随時更新されるため、購入時は同じページで確認する |
4. 用途から決め、仕様表で確かめる
選び方は「何を捨てられるか」で決まります。暗い部屋で映画を見るならコントラスト比が効くのでVAかOLED、色の正確さと視野角を優先するならIPS、価格と反応の速さだけを重視するならTNという順序になります。ただし第3章のとおり、ゲーミング向けの対応リストではTNとVAの選択肢自体が少なくなっています。OLEDを選ぶ場合は、コントラストと応答の速さと引き換えに焼き付き対策(メーカーの保証条件やケア機能)を確認する必要があり、当サイトの有機ELモニターの記事でも扱っています。
仕様表では、パネル方式・コントラスト比・応答速度の表記(GTGかMPRTか)・最大リフレッシュレート・認証を1行ずつ突き合わせます。下の表は本文で参照した4機種の公称値を並べたものです。いずれもメーカーの公表値で、当サイトでは実機を測定していません。
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| 機種(ASUSの公称値) | パネルとコントラスト比 | 応答速度の表記と最大リフレッシュレート |
|---|---|---|
| ProArt PA278CGV | IPS/標準1000:1(最大3000:1) | 5ms(GTG)/144Hz。認証はAMD FreeSync Premium、Calman Verified など |
| TUF Gaming VG279QM | Fast IPS/標準1000:1 | 1ms(GTG)/280Hz。認証はG-SYNC Compatible、VESA DisplayHDR 400 |
| TUF Gaming VG27WQ1B | VA(曲率1500R)/標準3000:1 | 1ms MPRT/165Hz。認証はAMD FreeSync Premium |
| ROG Swift OLED PG27AQDM | WOLED/標準1,500,000:1 | 0.03ms(GTG)/240Hz。HDRピーク輝度1,000 cd/m²、ASUS OLED Careの記載あり |
| 見るべき行 | パネル方式とコントラスト比は同じ表の別の行にある | 応答速度は括弧の中(GTG/MPRT)まで読む |
| 仕様表にない要素 | オーバードライブの効き方や実際の残像量は仕様表からは分からない | VESA ClearMRの認証があれば、共通条件で測られた比較材料になる |
注意点・利用条件
- パネル方式の仕組みと特性の説明は、EIZOライブラリーが再掲している2005年10月7日掲載の記事に基づきます。仕組みの説明は現在も通用しますが、同記事にある当時の市場動向(どの方式が多いか)は現在の状況を示すものではありません。この記事では、現在の分布を2026年9月19日のNVIDIAの対応一覧の集計として別に示しています。
- コントラスト比・輝度・応答速度はいずれもメーカーの公称値(多くは標準値)で、測定条件はメーカーごとに異なります。当サイトでは実機での残像・応答の測定を行っていません。
- この記事は価格・在庫・ランキングを扱いません。仕様は2026年9月19日にEIZO、VESA ClearMR、NVIDIA、ASUSの各公式ページで確認した記載です。
よくある質問
「1ms」と「5ms」の違いは体感できますか?
同じ測り方どうしでなければ比較になりません。EIZOは、一般に表記される応答速度が輝度10%から90%とその逆の合計で、中間階調間の応答が含まれないため「この数値だけでは実際の動画再生に適しているとは断言できない」と書いています。ASUSの現行機種でも1ms(GTG)と1ms MPRTが併存し、測っているものが違います。同じ括弧表記どうしで比べ、可能ならVESA ClearMRのように共通条件で測った指標を併用してください。
コントラスト比が3000:1のVAと1000:1のIPS、どちらを選ぶべきですか?
使う場所と用途で分かれます。EIZOの解説では、VA方式は電圧OFF時にバックライト光をほぼ完全に遮断できるためコントラスト比を高くしやすい一方、見る角度による輝度・色変化の弱点はTN方式と同様だとされています。IPS方式は視野角による変化が少なく階調全域で応答のばらつきが少ない代わりに、コントラスト比を高くしにくいとされています。暗い部屋で映像を見る時間が長いならVAやOLED、色の正確さや複数人での閲覧を重視するならIPSが向きます。
残像が気になります。オーバードライブは最大にすべきですか?
上げすぎは別の副作用を生みます。EIZOはオーバードライブを、電位差を大きくして応答速度を上げる技術と説明しており、VESAのClearMR試験でも行き過ぎ(オーバーシュート)と戻りすぎ(アンダーシュート)に上限が設けられ、数値目標のために全体の見え方が損なわれないようにしていると明記されています。設定は段階を上げながら、明るい物体の輪郭に白い縁取りが出ないところまでに留めるのが無難です。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- EIZO:TN?VA?IPS?──液晶パネル駆動方式の仕組みと特徴を知ろう(2005年10月7日掲載分の再掲) ↗
- EIZO 用語解説:応答速度 ↗
- EIZO 用語解説:オーバードライブ ↗
- EIZO 用語解説:IPSパネル ↗
- VESA ClearMR:Performance Criteria(階層定義と試験条件) ↗
- VESA ClearMR:FAQ(2022年11月1日更新・MPRTとの違い、表示技術への非依存) ↗
- NVIDIA:G-SYNC Monitors Manufacturers & Specs(2026年9月19日に取得・集計) ↗
- ASUS:ProArt Display PA278CGV Tech Specs ↗
- ASUS:TUF Gaming VG279QM Tech Specs ↗
- ASUS:TUF Gaming VG27WQ1B Tech Specs ↗
- ASUS:ROG Swift OLED PG27AQDM Specifications ↗