買ったばかりのPCが動かない:販売店の初期不良対応・メーカー保証・民法上の請求は別系統
届いたPCが動かないとき、連絡先は1つではありません。販売店が任意に設けている初期不良対応、保証書の無料修理規定に基づくメーカー保証、そして民法上の売主に対する請求は、相手も根拠も期間の数え方も別です。この記事は条文とメーカーの公表ページを実際に読み、3系統の違いと、買った直後に何を保管し何を確かめておくべきかを整理します。制度の一般的な説明であり、個別の紛争についての法的助言ではありません。
公開 · 更新 · FaultNote 編集方針
この記事が役立つ人・作業前の準備
- 買ったばかりのPC・モニター・SSDが正常に動かず、販売店とメーカーのどちらに言うべきか迷っている人
- 販売店の初期不良期間を過ぎてしまい、もう何も言えないと思っている人
- 延長保証に入るべきか判断するために、標準保証が何をどこまで約束しているか知りたい人
用意するもの
- 購入の証憑(レシート・領収書・納品書・注文履歴)を手元に出す。保証開始日の証明に使う
- 保証書を探す。裏面に無料修理規定が印刷されていることが多い
- 販売店の初期不良対応の条件(日数・対象・連絡方法)を、購入した店の案内で確認する
- 症状を記録する。いつから、どの操作で、何が起きるか。修理依頼でも請求でも同じものが要る
0. この記事の範囲
この記事は、日本国内で購入した機器についての一般的な制度の説明です。個別の事案について「あなたの場合はこう請求できる」と判断することはしません。紛争になっている場合や、相手の対応に納得できない場合は、消費生活センターなどの相談窓口に相談してください。
扱うのは、店の初期不良対応・メーカー保証・民法上の請求という3系統の違いです。通信販売の解除、消費者契約法、特定商取引法の各制度については、条文を確認していないため触れません。中古品や個人間売買も、条件が大きく変わるため対象外です。
引用する条文は、e-Gov 法令API から 2026-09-20 に取得した民法(明治二十九年法律第八十九号)の本文です。メーカー側の記述は、同日に各社ページで読み取ったものです。
1. 3系統を分ける
第一に、販売店の初期不良対応です。開封直後の一定期間内なら交換や返品に応じる、という運用を多くの店が設けています。ただし「初期不良」という語は、この記事が読んだ民法の条文にも、メーカー各社の保証に関する記述にも出てきません。法令上の制度名ではなく、店が任意に定めた運用だと読むのが素直です。条件も日数も店ごとに違うため、購入した店の案内を読む以外に確かめようがありません。
第二に、メーカー保証です。これは保証書に印刷された無料修理規定に基づく無償修理の約束で、相手はメーカーです。期間はモデルによって違います。
第三に、民法上の契約不適合責任です。相手は売主、つまり買った相手であり、メーカーではありません。保証書の有無や保証期間とは別の系統として存在します。
3つは排他ではなく並存します。初期不良期間を過ぎたからメーカー保証が使えないということはなく、メーカー保証の期間内だから売主に何も言えないということもありません。どれを使うかは、何が起きているかと、どの相手が早く解決できるかで決まります。
表は横にスクロールできます →
| 系統 | 相手 | 根拠 | 期間の考え方 | 出てくる場所 |
|---|---|---|---|---|
| 初期不良対応 | 販売店 | 店が定めた運用(法令上の制度名ではない) | 店が定める日数 | 購入した店の案内・規約 |
| メーカー保証(無料修理) | メーカー | 保証書に記載の無料修理規定 | モデルにより異なる。dynabook の説明では1年・2年・3年・4年 | 保証書と、その裏面の無料修理規定 |
| 有償の保証・保守サービス | メーカーまたは販売店 | 各サービスの規定(有償) | 加入内容による | 購入時の案内、メーカーの保守サービスのページ |
| 契約不適合責任 | 売主(買った相手) | 民法562条・563条・564条ほか | 不適合を知った時から1年以内の通知(566条) | 条文。契約書や保証書には書かれていないことが多い |
2. メーカー保証は何を約束しているか
dynabook の FAQ(情報番号017633、ページ内の更新日表示は 2025.10.23)は、メーカー保証期間を次のように説明しています。「メーカー保証期間とは、取扱説明書等の注意書きによる正常な使用において故障した場合、保証書に記載の『無料修理規定』に準じて、無料で引き取り修理をお約束する期間のことを言います。」 そして「保証期間はご利用のモデルによって、お買い上げ日より1年、2年、3年、4年と異なります。」と書いています。
同じページは、確認の方法と起算日についても具体的です。「メーカー保証期間は、PC購入時に同梱されている保証書で確認することができます。」「保証書の裏面に『無料修理規定』について記載されています。」「保証開始日は、PCのお買い上げ日となります。PC購入時のレシート、領収書、納品書などと合わせて保証書は大切に保管してください。」 つまり、保証を使う前提として購入日を示す書類が要る、ということです。
NEC のビジネスPC「標準保証 1年目引取修理サービス」のページ(2026-09-20 閲覧)は、開始日の確認方法をさらに細かく定めています。「『対象機器をNECパーソナルコンピュータ、NECまたは販売店からご購入頂いた日』が保証の開始日となります。」としたうえで、保証書の記載、または購入日が明記された書類(納品書・領収書など)で確認し、どちらでも確認できない場合は「対象機器の型番と製造番号から判別できるNECパーソナルコンピュータからの出荷日」による、と書いています。出荷日は購入日より前ですから、証憑を失うと不利になり得ます。
この2社の記述から言えるのは、期間の長さはモデルごとに違い、起算日は購入日で、その証明は買った側が持っているという点です。期間の数字だけを覚えても意味がなく、保証書と証憑を保管する行動のほうが効きます。
3. 保証でよく見落とされる対象外と、修理に出す前の準備
NEC の同じページは、保証の対象と対象外を明示しています。対象は本体と、出荷時に組み込まれている、または同梱されている純正拡張機器・マウス・キーボードで、注記に「外付けディスプレイは本保証対象外となります。」とあります。対象外機器としては「外付けディスプレイ、拡張機器、バッテリー等の消耗品は対象外となります。」と書かれ、さらに「有寿命部品は、保証期間内であっても、使用頻度、経過時間、使用環境により有償となる場合があります。」と続きます。
購入前の判断に効くのはここです。本体と同時に買ったモニターや外付けドライブは、本体の保証とは別枠で管理されます。バッテリーのような消耗品も同様です。「PCを3年保証で買ったから周辺機器も3年」とはなりません。
修理に出すときの前提も、同じページに書かれています。「記憶装置(HDD/SSD等)交換等の修理交換の際は、各種設定、プログラムやデータについて当社では一切の責任を負いかねますのでご了承ください。」 修理でデータが保全されるとは書かれていない、ということです。修理を依頼する前にバックアップを取り、暗号化している場合は回復キーを控えておくのが実務です。
もう一点、同ページには「記憶装置(HDD/SSD等)にマイナンバー(個人番号)が記憶されたデータがある場合には、修理をお受付できません。」という記載があります。修理の可否そのものに関わる条件が書かれている例なので、依頼前に各社の修理規定を読む価値はあります。
4. 民法上の請求——相手は売主で、期間の数え方も違う
民法562条1項は次のとおりです。「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」 請求先は売主であり、メーカーではありません。請求の形として修理だけでなく代替物の引渡し、つまり交換も条文に並んでいます。
ただし同項にはただし書があります。「ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」 買主が交換を求めても、売主が修理で応じられる場合がある、ということです。また同条2項は「前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。」と定めています。
563条は、相当の期間を定めて追完を催告しても追完がないときに、不適合の程度に応じた代金の減額請求ができるとしています。追完が不能であるとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなど、同条2項各号に当たる場合は催告なしで直ちに請求できます。564条は、これらの規定が損害賠償の請求や解除権の行使を妨げないと定めています。
期間の制限は566条です。「買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないとき」は、追完・減額・損害賠償・解除を理由とする主張ができなくなります。ここは誤解の多いところで、購入から1年ではなく、不適合を知った時から1年以内の通知です。なお572条は、担保責任を負わない旨の特約をした場合でも「知りながら告げなかった事実」等については責任を免れないと定めています。
5. 買った直後にやっておくこと
制度の違いを覚えるより、次の数分の行動のほうが効きます。購入の証憑を保証書と一緒に保管する。保証書の裏面の無料修理規定に目を通し、対象外に何が並んでいるかだけでも見ておく。販売店の初期不良対応の日数を控える。
そのうえで、開封したらすぐに全体を一度動かしてください。全ポートに何かを挿す、外部ディスプレイをつなぐ、無線と有線の両方でネットにつなぐ、キーボードの全キーを打つ、スピーカーとマイクを鳴らす。初期不良対応の日数は短いことが多く、使い始めてから気づく不具合ほど系統が第一から第二へ、さらに第三へと移っていきます。
画面のドット抜けのように、そもそも何が不良に当たるかがメーカーの規定で決まっている項目もあります。同じ「1点の輝点」でも、メーカーによって交換の可否も期間も異なるため、その種の項目は購入前に規定を読むほうが確実です。
最後に、修理に出す可能性を織り込んで、最初のうちからバックアップの置き場所を決めておいてください。前節のとおり、修理でデータが保全されるとはメーカーのページに書かれていません。
注意点・利用条件
- この記事は一般的な制度の説明であり、個別の事案についての法的助言ではありません。紛争になっている場合は消費生活センター等の相談窓口に相談してください。
- 「保証期間は法律で1年と決まっている」は誤りです。民法566条は通知の期間制限であって保証期間ではなく、メーカー保証の期間はモデルごとに異なります(dynabook の説明では1年・2年・3年・4年)。
- 566条の1年は「購入から1年」ではなく「不適合を知った時から1年以内の通知」です。ここを取り違えると、まだ主張できる場面で諦めることにも、既に期間を過ぎている場面で待つことにもつながります。
- 引用したメーカーの記述は、dynabook と NEC の2社の、2026-09-20 時点の特定ページのものです。他社が同じ条件を定めているとは限らず、同じ社内でも製品カテゴリーによって規定が異なることがあります。NEC のページは法人向けビジネスPCの標準保証について書かれたものです。
- 販売店の初期不良対応については、店舗の規約の一次情報をこの記事では確認していません。日数や条件を具体的に書いていないのはそのためです。
- 通信販売の解除、消費者契約法、特定商取引法には触れていません。条文を確認していないため、効果を書けないと判断しました。
- 中古品・個人間売買は対象外です。売主が事業者かどうかで前提が変わります。
よくある質問
販売店とメーカー、先にどちらへ連絡すべきですか。
この記事では順序を断定しません。判断材料だけ示します。購入から日が浅く、店が初期不良対応の期間を定めているなら、その期間内は店の運用が最も早いことが多い系統です。期間を過ぎている、またはメーカー直販で買ったのであれば、保証書の無料修理規定に基づくメーカー保証が次の系統になります。これらとは別に、売主に対する民法上の請求が並存します。
初期不良期間を過ぎたら、もう無償では直らないのですか。
そうとは限りません。初期不良対応は店が定めた運用の1つで、メーカー保証はそれとは別の系統です。dynabook の説明では、保証期間はモデルによって1年から4年まであり、正常な使用における故障であれば無料修理規定に準じた無償修理の対象になります。さらに、売主に対する民法上の請求も期間の考え方が別です。
保証書をなくしました。もう保証は使えませんか。
この記事が読んだ2社のページは、いずれも購入日を示す書類を代わりの確認手段として挙げています。dynabook はレシート・領収書・納品書を保証書と一緒に保管するよう案内し、NEC は保証書の記載、または購入日が明記された書類、どちらでも確認できない場合は型番と製造番号から判別できる出荷日による、としています。出荷日は購入日より前になるため、証憑があるほうが有利です。実際の扱いは各社の規定によります。
同時に買ったモニターや外付けSSDも、本体と同じ保証ですか。
NEC のページは、外付けディスプレイを本保証の対象外と明記し、対象外機器として外付けディスプレイ・拡張機器・バッテリー等の消耗品を挙げています。周辺機器はそれぞれの保証で管理されると考えるのが安全です。実際の範囲はメーカーと製品によるため、各製品の保証書を確認してください。
修理に出すとデータは残りますか。
残ると約束したページは、この記事では見つかりませんでした。NEC のページは、記憶装置の交換等の修理交換の際、各種設定・プログラム・データについて一切の責任を負いかねると明記しています。依頼前のバックアップと、暗号化している場合の回復キーの控えが前提だと考えてください。
出典・確認日
情報確認日:。仕様・操作方法・価格などの確認に使用した出典を掲載しています。適用条件や現在の情報は各リンク先で確認してください。
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第562条・563条・564条・566条・572条。e-Gov 法令API(lawdata/129AC0000000089)から 2026-09-20 に取得した本文により確認 ↗
- dynabook FAQ 情報番号017633「メーカー保証期間を確認する方法」。「保証期間はご利用のモデルによって、お買い上げ日より1年、2年、3年、4年と異なります。」ページ内の更新日表示は 2025.10.23(2026-09-20 閲覧) ↗
- NEC:標準保証 1年目引取修理サービス。保証開始日の確認方法、「外付けディスプレイは本保証対象外となります。」、有寿命部品の扱い、修理交換時のデータについての記載(2026-09-20 閲覧。jpn.nec.com の当該URLは www.nec-lavie.jp へ転送される) ↗